限られた時間の中で、ビシッと子どもの心に響く言葉を伝えることができるかどうか。忙しい父親のセンスが問われるところです。

 前回の記事「子どもの『折れにくい心』を育てるマジックワード」、前々回の記事「子どもの自尊感情や好奇心を高めるマジックワード」に引き続き、子どもの心に響く、マジックワードの代表例を紹介しようと思うのですが、その前にちょっと寄り道。

幸せは、つかむものではなく、感じるもの

 先日、近所の居酒屋さんの座敷席で、家族で食事をしていたときのこと。となりのお座敷では、親子孫3世代のご家族が食事をされていました。酔っ払って調子づいたおじいちゃん、子育ての持論を大声で語りはじめました。

 「子育てのコツなんて、社会で成功した人に聞かなくちゃ意味がないだろう。名もない学者や保育園の先生がいくら子育てを語ったところで説得力がない」というのです。

 一見正論です。しかしよく考えてみてください。「成功」ってなんでしょう。このおじいちゃんの話によれば、大きな会社の社長になったとか、大臣になったとか、そういう人のことを成功者と呼ぶようです。しかしその人にとっての「成功」が、自分の子どもにとっての「成功」であるかどうかはわからないはずです。

 総理大臣になりたいと思う人もいれば、「絶対になりたくない」と思う人もいるわけです。その子にとっての成功や幸せではなく、世間一般の、テンプレート化された成功を、無意識のうちに子育ての枠組みにしてしまっている時点で、「あれれ、このおじいちゃん、大丈夫かな?」とちょっと心配になってしまいました。ま、わいわいがやがや賑やかなご家族だったので、大丈夫だとは思いますが。