気持ちが凹んでいるとき、「自分の気持ちをわかってもらえた」と思うだけで、ひとは前に進む意欲を復活させることができます。そういう経験を繰り返すことで「自分は一人じゃない」「やるだけやってみよう」「なんとかなるさ」と思える心の強さが育まれます。

 さらに、凹んでいる子どもの気持ちにより添うことで、子どもの心が強くなるという効果以外に、子どもの心が優しくなるという効果もあります。

 自分が困っていたり、悲しんでいたりしたときに、優しく共感された経験が豊富な子は、自分の前に困っている人や悲しんでいる人がいたら、優しく共感してあげることが当たり前だと思うようになります。物理的には何もしてあげられず、何も状況を変えることはできなくても、気持ちに寄り添うことはできると学びます。

 強さと優しさは、同時に育まれるものなのです。

「パパが代わってあげたいよ」

 子どもが熱を出して、「パパ、助けて?」なんていわれたときなど、「何とか助けてあげたいんだけど、なすすべなし……」と無力感を感じますよね。でも、まったく何もできないわけではありません。

 「つらいよね。パパが代わってあげたいよ」と、顔をしかめてあげてください。一緒に苦しみを味わっていることを伝えてあげてください。それだけで子どもは少し救われます。

「あきめない気持ちはエライ」

 スーパーのお菓子売り場で「これほしい!」といって譲らない。しまいには大の字になってしまったり……。

 親からしてみれば、困った行動です。しかし、よく考えてみれば、子どもは、怒られることを覚悟のうえで、自分の意思を必死に表現しているわけです。ちょっと見方を変えてみれば、「だだこね」は「あきらめない不屈の精神の証し」ともとらえられるわけです。これもある種の「生きる力」といえるでしょう。

 それを頭ごなしに否定されれば、自分の意思を主張する力やあきらめない力まで否定することになりかねません。

 「ダメなものはダメである」と伝えるのと同時に、「でも、あきめない気持ちはエライ。別のところで発揮しなさい」とほめてあげましょう