中川 だから子どもには、どんなうれしいことがあったかを聞いたほうがいい。「うれしいこと、あった?」って聞けば、子どもはうれしいことをいっぱい探そうとするでしょう。

 私は親に「子どもの自慢をして」って言うんです。我が子の自慢を大いにしてちょうだいって。こんないいことをした、こんなにうれしいことがあったって。すると、それを聞いた私たちもうれしくなる。

子どもが一番好きなのは誰か?

羽生 働いているお母さんは子どもを保育園に預けるとき「ママ、お仕事に行かないで」と言われて胸が締め付けられるような思いを経験していると思うんです。でも仕方がなく置いていく。

中川 そういう気持ちは保育士にぶつけてほしいんです。そうすれば保育士も「2人で育てるんだ」という気持ちになるじゃない。

 もちろん子どもを置いていく親の気持ちも分かります。

 これは編集者で作家のいぬいとみこさんに聞いた話ですが、ロシアがまだソ連だった頃、モスクワでバスに乗ったら女性の車掌さんが小さな女の子を連れていたそうです。「今日、この子は保育園に行きたがらなかったから」って。

羽生 だから職場に連れてきたんですね(笑)。

中川 まわりの人たち誰も驚いていないんだって。私、いいなと思った。日本もそれぐらいのんびりしたらいいのに。「今日は保育園に行きたがらないから」と会社に連れていっても、みんなに何も言われない。そういうお国柄っていいでしょ。

 会社に連れていくのは無理かもしれないけれど、お互いに融通し合って「今日はちょっと早く帰ります」と言えるといいですよね。

羽生 そういう気配りができる職場はいいですね。

中川 新しい子どもが入園するでしょう。すぐに保育士は信頼関係を結ばないと、保育はうまくいかないんです。だから一生懸命話しかけたり、抱いてみたり。なんとかこの子と仲良くなりたいと思うんですよ。

 どうすれば仲良くなれるか。その子が一番好きな人を私も好きになればうまくいくんです。子どもは誰が好きか。お母さんが一番好きなんですよ。