藤井  部下とのコミュニケーションが希薄な人は、未だに長く働く人を評価し、時短勤務を評価しない傾向がある。現場を知っていれば、安直にそんな考え方はできないはず。

渥美  時短勤務を経験した女性社員にアンケートを取ったところ、7割が「以前より効率よく働けるようになった」と答えています。総生産性ではなく、時間当たりの生産性で見れば、少ない時間をやりくりしているワーママのほうが上であるケースが多く、そして一度就いた生産性は落ちないもの。育児も、介護も、未来永劫続くものではないから、時短勤務を経験した人は生産性の高い会社にとって有益な人材と言えます。

藤井 確かに。ダラダラ時間ばかり書けて仕事をこなしている人こそ、評価を見直すべきですよね。

女性は不公平で理不尽な上司には付いていかない

渥美 余談ですが、フロントランナーとして活躍している女性社員を抜擢した上司が、その後役員に昇格する確率は、他の人に比べて平均で6~7倍高いという数字が出ています。男女の性差関係なく優秀な人材をフェアに見抜ける力があるから、そしてどんな部下に対してもきめ細やかにフォローできる人だから、という2つの理由が考えられます。出世する過程で、ある程度までは部下を踏みつけて上に行けますが、役員クラスにまで上がるには、「部下にひと押し」してもらわねばなりませんからね。

藤井 その通りです。女性はとても正義を大切にするので、不公平で理不尽な上司には絶対に付いていかないし、支持もしません。女性社員が納得して「あの人なら」と推薦する人が出世していると感じますね。

 これからワーママはさらに増えるでしょう。彼女たちに信頼されることが、できる上司の必須条件になる日は近いと思われます。「ワーママのことはわからない」と腰を引いてしまうのではなく、積極的に現場に飛び込み、現場の悩み、不安、苦労を肌で感じてほしいですね。

(構成/ライター・伊藤理子、写真/花井智子)