渥美  こういうときは、支援する人、される人を固定化しない工夫が必要です。サポートする側に、「サポートすることは損ではない」と思える場を作るのです。例えば、年末年始や連休の前後など、「忙しいけれど休めると嬉しい」時期に、サポート側にお休みを取ってもらい、この時とばかりに、普段サポートされている側のワーママに仕事を頑張ってもらうんです。もちろん、上司はそれを全力でフォローし、サポート側がお休みから戻って来た時には仕事を完璧に終わらせておく。そして、「○○さんが、普段サポートをしてくれている皆さんにお礼がしたいと、頑張ってくれたんだよ」とフォローを入れておけば、不公平感が低減します。

藤井  サポートする側の評価制度を見直しては?という意見もありますが、評価制度自体を見直していては時間がかかるし、現実的ではありません。上司の裁量で、現場で工夫する方が、解決が早いでしょうね。

渥美 現場でフォーメーションを決めさせるのも一つの方法です。上司のほうで「こういう体制でフォローし合ってほしい」などと決めてしまうと、いくらそれが良案であっても絶対に「勝手に決められた」「不公平」という意見が出ますから。

全てはコミュニケーション不足に起因。自らをさらけ出し、現場に飛び込んで

藤井 こういう話を聞いていると、上司と部下の日ごろのコミュニケーションの大切さを痛感しますね。上司がワーママの苦労や、サポート側の大変さを理解しているだけで、現場の空気や不満度合いはだいぶ変わります。

 講師として、管理職研修も数多く手掛けていますが、「自分の部下はどんなタイプか、仕事に置いて何を大切にしているか、書き出してください」というと、「知らない」という人がとても多い。自分の部下のことなのに…コミュニケーションが足りなさすぎると感じます。上司から積極的にコミュニケーションを取りに行き、仕事だけでなくプライベートについてもざっくばらんに話し合い、自らも仕事観やプライベートをさらけ出した方が、部下から信頼されます。

渥美  家族のこともそう。「家族をさらすなんて」と思うかもしれませんが、家族は仕事に一番影響を及ぼすもの。部下の家族情勢を把握するのは上司の必須スキルだと思います。でも一方的に聞き出すのは、パワハラとかセクハラなんて言われかねないから、まずは自分からさらけ出すんです。

 仕事で、家庭で、苦労をしてきた上司は、人の痛みが分かります。自分の失敗談をさらけだしてくれると、部下は安心し、共感します。加えて、その失敗にどう対応して来たかまで教えてくれるとさらに説得力が増し、心を開いてくれるものです。