Q. なぜでしょう?

山本 法律で定められた介護休暇は、要介護状態の家族が1人の場合、年5日と短いものです。この休暇は、介護そのものではなく、介護方法などに関する情報を収集するのに使うべきなのです。

 例えば、自治体や役所、支援センターなどに通い、民間の介護サービスや制度について情報を得る時間として活用する。問い合わせた先の職員によっては、相性が悪く不親切に感じられたりするかもしれませんが気長に諦めず、相性のいい人を見つけるのが何よりのポイントです。

 介護を一人で抱え込まず、チームで支える体制を整えることが大事です。

介護のために仕事を辞めるのは最大のリスク

山本 仕事を辞めて介護に専念するのは危険だという指摘もありました。ある調査によれば介護のために仕事を辞めた人の8割が、「精神的、肉体的、経済的に追い込まれて苦しくなった」と答えています。

 仕事は決して逃げ場所ではありませんが、佐々木常夫さんだって「仕事があったから乗り越えられた」とおっしゃっていました。自分の人生のバランスあってこその介護だということをぜひ知っていただきたいです。

 最後にお金の問題です。当たり前のことですが、介護にはお金が掛かります。親の介護費用は親の資金から捻出することが望ましいという話でした。親の資金がどのくらいあるのか話し合える環境をつくることが大切です。

 ワークライフバランスは、世田谷区が推進している指針でもあります。家庭の状態が良くなれば、仕事も良くなる。仕事の状態が良くなれば、地域や社会も良くなる。どれかひとつが欠けてしまっては、良い循環は生まれません。その上でそれぞれが個性を発揮してイキイキと暮らしていけるようにしたい。そのために、私たちは情報を発信し続け、地域に貢献していきたいと思っています。

(取材・文/砂塚美穂、撮影/花井智子)