会社という組織にとって、社員の残業を削減し、生産性を高めるというタイムマネジメントは経営に直結する大問題です。一過性の社内運動で済ませられるような生易しいものではありません。こんな大事な問題を放置しておく日本の経営者は極めて不真面目だと思います。

トップダウンで継続的にやる。そうしなければ「会社は変わらない」

 どんなに現場の一人が本気を出しても、トップダウンで組織全体に変革を起こさなければその変化は一時的なものに留まります。本気で変えようと思ったら組織のトップが決意して、そのために必要な仕組み・仕掛けづくりに対して旗を振り続けないといけません。

 私は実のところ、3年以上同じ部署に在籍したことがありません。着任後、3カ月で部下の残業の軽減に成功し、チームは定時に退社できるようになる。しかし、私が別の部署に異動してしまうと、あっという間に元の木阿弥。上司が変われば長時間労働に逆戻りしてしまったのです。

 また、他社の例になりますが、かつてパナソニック電工が、ワークライフバランスに熱心な専務を中心に「仕事ダイエット運動」を行ったことがあります。各拠点に「仕事ダイエット駐在員」を配置し、「資料ダイエット作戦、会議ダイエット作戦」と全社一斉にプロジェクト推進の声を挙げ始めた。3年後、見事「ワークライフバランス大賞」を受賞しました。それでもやはり、プロジェクト解散後は元に戻ってしまった。

 繰り返しになりますが、業務の効率化は、企業トップが組織に属する全員の仕事のやり方を変える覚悟をしなければ実現することは難しい。そして、トップが打ち出した新しい指針に基づいて、全社員が効率化に向けて努力し続けなければならならないのです。

ワークライフバランスを必要としているのは、子育て世帯だけではない

 現在、介護を理由にして仕事を辞める人が年間15万人を越えています。この数字は今後さらに増えるでしょう。核家族化が進み、一人っ子同士が結婚すれば2人で4人の親の面倒を見なければならず、家族だけで家族を支えるのが難しい時代になってきています。

 身体障がい者350万人、うつ病患者400万~500万人、引きこもり130万人、痴呆症300万人、そのほかダウン症、ニート、がん患者、家庭内暴力など含めれば、5人に1人は家族に弱者を抱えている計算になります。それなのにみんなそういった問題を家族以外には言わずに抱え込んでいるのです。