(前編・「年収100万円減、「地域限定職」選んだ夫の決断」のあらすじ)。川田拓郎さん(38歳・仮名)は、トイレタリーメーカーの総務部勤務。同じ会社の商品開発部で働く妻(43歳)と、8歳の女の子、4歳の男の子がいる。

 第1子の出産を機に、育児休暇を取得した妻。川田さんの希望もあり、最長3年間取れる休暇をフルに使う予定だった。しかし、心の中では早い復帰を望んでいたらしい。ある日、復帰を切り出した妻の、見たこともないような真剣な表情に、川田さんは「自分自身の働き方も改めるべきではないか」と気づかされる。

 

 妻の職場復帰日に、川田さん夫婦は2人である手続きをした。「地域限定社員」への移行申請だ。「地域限定社員」とは、育児や介護など家庭の理由で、転居を伴わない雇用形態に一時的に移行できる制度。

 「2人とも、全国転勤を伴う総合職として入社しました。妻も私も、結婚前に地方勤務を経験しており、今後も全国にある支社への転勤を命ぜられる可能性は大いにあります。例えば今、僕が転勤することになったら…子どもの学校はあるし、彼女も仕事をしているし、僕が単身赴任するのが一番自然な選択でしょう。でも、そうなれば彼女一人に子育てを任せることになり、これまで以上に負担をかけてしまう。それに、家族が離ればなれに暮らすなんて、僕にはどうしても考えられなかったんです」

狭まる異動の選択肢、出世も遅くなりがち

 総合職に比べ、地域限定職を選べば年収は約100万円ダウンする。妻と合わせると、200万円もの世帯収入減だ。加えて、地域限定になるとどうしても「部署異動の選択肢」が狭まる。