最近、多くの企業でワークライフバランスが声高に叫ばれているが、実践や取り組みの姿勢は企業によってバラツキがある。会社は同じでも、部署やチームによって温度差があるのが実情だ。また同じ屋根の下に暮らす家族間でさえ、その言葉の捉え方に違いがあるのが現状のようだ。

 そんな中、世田谷区生活文化部は毎年1回「ワーク・ライフ・バランスな1週間」と題し、様々な視点でのイベントを企画・主催。昨年末に開催された回では、東レ経営研究所・所長の佐々木常夫さんによる講演会「ワーク・ライフ・バランス~仕事も家庭もあきらめない」を開催した。その内容から「日経DUAL」読者にとってためになるメッセージをお伝えしたい。

 「神様は私に試練を与えたというか、ちょっといたずらをされたようだ」

 佐々木常夫さんの代表的な著書『ビックツリー』はこの一文から始まる。自閉症の長男。肝硬変を患い、やがてうつ病を併発した妻。佐々木さんは入退院を繰り返す妻に替わり毎朝5時半に起きて子ども3人分の朝食と弁当を作り、8時に出勤。全力で業務をこなし、夕方5時には退社する日々を送った。

 追い討ちを掛けるように繰り返される転勤。その間、3度にわたる妻の自殺未遂。そして、戦友である娘の思いがけない自殺未遂。共働きではないが、状況としては、DUAL世代と同様もしくはそれ以上に大変で多忙な生活を余儀なくされた。度重なる難題から逃げることなく「人生の一部」だと受け止め、仕事でも結果を出し、業績をあげ、家族を守ることを全うする佐々木さんの姿勢と家族の歴史。この本に描かれた「仕事も家庭もあきらめない」真摯な生き方に胸を打たれる人は多い。

 こうした試練の中で編み出された佐々木さんの仕事のやり方は、『部下を定時に帰す仕事術』をはじめ『そうか、君は課長になったのか』など多数のビジネス書を生み、いまなおロングセラーになっている。「人生の遺言のつもりで本を書いたら、ご褒美をもらったようだ」と佐々木さんは笑う。しかし、仕事を効率化するノウハウを指南する著書がこんなに売れているのに、なぜ多くの企業は長時間労働をやめられないのか。なぜ、いまだに残業が美徳とされ、評価されているのか。その真相に辿りつけるだろうか。

ワークライフバランスは「私生活の充実」という甘っちょろいものではない


東京都世田谷区の会場で講演する佐々木常夫さん

 「ワークライフバランス」とは、「仕事と生活の調和」を意味します。勘違いされやすいのですが、これは決して「仕事を定時に終えて自分の生活を充実させる」という意味合いではありません。仕事の改革を前提とし、個人を成長させ、会社の成長につなげるための経営戦略なんです。

次ページから読める内容

  • 佐々木常夫さんの部下への仕事10か条
  • 人が変わるのに遅すぎることはない

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