冷静に考えれば自分も通った道なのですが、これが親の立場になって初めてその生意気さに気付かされたりします。本当に「一人で大きくなったような顔」をします。

 もちろん日常的に家族より友だちが大事になり、家庭のルールや和を破り、わがもの顔で好き勝手に振る舞います。当然、親として叱ると、反抗的な目付きやふくれっつらが返ってきます。毎日毎日、大小さまざまな問題があり、本当に憎らしい時期です。

 共に子育てをし、苦労も喜びも分かち合ってこなければ、子どもの問題行動に夫婦で向き合うことはできず、「君に任せているのだから」という逃げの言葉につながります。

 また子どもの側からしても、普段家にいないオヤジに突然父親ぶられても、素直になれるはずがありません。

 子どもの思春期は夫婦にとっての試金石であり、家族の真価が問われる時なのです。ここで真剣に向き合わないと、行動がバラバラになると共に心もバラバラになってしまいます。

夫婦で子どもに向き合わないと事態は好転しない

 さて、反抗的なわが子にどう向き合うかですが、子育ては自分が育てられたようにしかできないと言われることがあります。自分にはほかのモデルがないので当然なのですが、夫にも自分自身の育てられ方がありますから、子どもとの接し方が夫婦喧嘩のタネになることはしばしばあります。しかも、子どもはわが子といえども別人格で、自分に似ている場合もあれば夫に似ていることもあり、まったく違うこともあるものです。そうした状況の中で、両親として、親子として、子どもが大人になるという新たな段階の関係を作っていくことは困難を伴います。ぶつかり合いながらも、お互いに逃げ出さないことが大切です。

 子どもが育っていく過程では、多様な大人との関わりが欠かせません。しかし言うまでもなく、親からの影響は絶大です。

 ところが、親も最初から親というわけではないのです。子育てに関して造詣の深いある精神科医が、自分の経験から「4人目の子育てでやっと親のプロになれた」と述べていました。つまり、ほとんどの親はアマチュアであり、親になる過程の第一歩から、試行錯誤しながら子育てしていくものなのです。ですから、うまくいかなくて当たり前、深刻に悩む必要はないのです。

 ただし、親としての能力不足と悩む必要はないけれど、解決・改善しなければならない状況というのはあります。その時、共に心を痛め、相談し合うべき同志こそ子どもにとっての両親、つまり夫婦なのです。