ただし、親の責任として教え諭さなければいけないことは多々あります。大人の考えや自分たちの価値観をしっかりと伝える必要があります。そうした時、反抗期の子どもが素直に納得し従うことは稀ですが、聞き分けるまで深追いすることはやめましょう。いわば、親の価値観の刃を指し示し、チャリンと合わせたら、鞘に収めるように心がけます。

 その時点では、親の胆力が試されるような難しさがありますが、5年、10年の後に「ああちゃんと伝わっていたのだ!」と思えることが、子どもたちの口から直接聞けたり、振る舞いから間接的にわかって、深い喜びを感じた経験が幾度となくあります。 小憎らしく感じる日々も、子どもの成長を信じて必要以上にイライラしないようにしましょう。

急な父親ヅラはマイナスでしかない

 私は、思春期の子育てを乗り越えた時に、本当の親になるのだと思っています。親としてというよりも、人間としての力量が問われると言っていいでしょう。

 ここで問題になるのが父親の態度です。この困難な子育て期に、妻が夫に、子どもについての怒り、悩み、愚痴などを訴えた時、決まり文句のように「子育ては母親の責任だろう」とか「君に任せているのだから(俺は知らない)」などと言ってしまう夫は少なくないのではないでしょうか。それでは夫としても父親としても失格で、妻は本当につらい思いをします。

「イクメン」とは単に育児をすることではなく、妻と共にわが子の成長を見つめ、この思春期に父親として向き合うことまで含まれているのです。

 数年ほど前に「17年前の育休 効果いまも」という見出しで、朝日新聞のイクメン特集にわが家のケースが記事になりました。「イクメン」が増えつつある昨今ですが、乳幼児・児童の時の関わりが思春期以降にも有意義だという内容です。夫は、育児経験から「無理に父親らしくしようと肩ひじ張らず、子どもと向き合え」、息子は「父が近くにいるとほっとする」と応えています。