菅原 プロジェクトでの調査によると、子どものテレビとの接触時間は、0〜1歳児だと1日平均で3時間程度。2〜5歳になると外遊びができるようになるので、2時間〜2時間30分程度です。

 ただし接触時間の内訳では、大人と一緒に見ていることがほとんどで、子どもだけで見ているのは0〜5歳では30分程度にしかすぎません。

子どもの1日のテレビ接触時間を表したグラフ。NHK“子どもに良い放送”プロジェクトの調査結果から(1186世帯への調査)
子どもの1日のテレビ接触時間を表したグラフ。NHK“子どもに良い放送”プロジェクトの調査結果から(1186世帯への調査)

 また、家の中でテレビをつけっぱなしにしておいても、幼児はずっとテレビを視聴しているわけではありません。テレビに興味がなくなったら別のことで遊ぶなど、子どもは自分で上手く遊びを調整しています。

――テレビをつけっぱなしにしていると子どもはずっと見ている、と思っていました。

菅原 実は、幼児にとっては、テレビはそこまで魅力的なものではありません。

 幼児はモノをなめたりかじったりしながら、自分が働きかけたことに何らかの結果が返ってくることで学ぶことに夢中です。また、彼らにとって一番楽しいのは親や兄弟、友達とのコミュニケーションです。そういう意味では、一方通行のテレビは、幼児にとっては物足りない道具なのです。

――食事中はテレビを消したほうがいいとも、よく言われますが……。

菅原 それもケースバイケースだと思います。

 以前、大阪在住の方が、土曜日のお昼ごはんは吉本新喜劇を見ながら食べるのが家族の楽しみなので、テレビを消すなんてあり得ないとおっしゃっていました。それはその通りで、家族の楽しみをなくしてまでテレビを消すことはありません。

 映像には、子どもに世界を知らせるという側面もあります。ただテレビを見せないというのではなく、家族のコミュニケーションのひとつとして使うようであれば、悪影響はありません。

 親がテレビ好きな場合は視聴時間が長くなる傾向がありますが、先に述べた平均的な視聴時間を目安として、それより長い場合は、他の遊びもしているかチェックするとよいでしょう。

――どのようにチェックすればよいのでしょうか。

菅原 私はよく「生活時間調査」をおすすめしています。何時に子どもが起きて、誰と何をしていたかを1週間チェックしていくと、絵本を読む時間が少なかったとか、テレビの視聴時間が平均より長かったなど、時間の使い方を把握することができます。

 そうすれば「日曜日は父親と公園に行くようにしよう」など、子どもがより健康的な生活を送れるような工夫ができるのです。

絵本と同じく「会話の道具にする」のが効果的

――そうは言っても、やはり子どもにテレビを見せることへの不安感は拭えません。

菅原 テレビも絵本や外遊びと同じように、コミュニケーションのツールのひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。