保育園では子ども達はきょうだいのように一緒に生活しています。ところが、子ども同士の関係について、保護者同士がもめることもあります。例えば、1歳前後の子ども同士の「かみつき」。これは子どもの性格というよりも、まだ言葉が十分に出ない時期の自己主張の手段であり、誰かがやるとマネで広がることもあります。

 もちろん先生は「かみつき」が起こらないように注意を払っていますが、起こってしまったら、すぐに冷やすなどの手当てをして、かんだ子どもには「かんだら痛いよ」とその場で教えます。かまれた子どもの保護者には、お迎えのときに状況を説明して、止められなかったことを園の責任としてわびるのが普通です。

子どものケンカは教育上、意味がある 親が口を出し過ぎるのはむしろ有害

 このとき、「かんだ子どもの親に直接わびさせろ」というクレームを入れるのは、あまり得策ではありません。かんでしまうのは親のしつけのせいではないし、帰宅後、何時間も前に起こったことを親が子どもにしかっても、この時期の子どもには何のことか分からないからです。そんな子どもの発達を親も理解し、「お互いさま」と思える関係があると、保育園生活がラクになります。

 少し大きくなってからのけんかにも、子どもなりの意味があります。子ども達は、子ども社会で真剣に自己主張をし、ぶつかり合い、泣かされたり泣いたりしながら、ひと回りもふた回りも大きく育っていきます。けんかが激しくなりそうなときは、先生が間に入って双方の話を聞いたり、うまく自己主張ができない子どもの気持ちを代弁してみせたりして、表現する力や共感する力、伝え合う力などが育つように対応します。

 このとき、いちいち保護者が介入したり、相手の子どもや親を責めたりすると、保育園でも、子ども達の自由な遊びやぶつかり合いを制限していかざるを得なくなり、大切な教育の要素を失うことになるのです。

 「保育園は子どもが育ち合う場」という視点を持って保育園ワールドを見てみると、「なるほど」と思うことが多いはずです。