虎蔵、は仮の名前だが、ヨメ、親族一同の大反対を押し切って息子の名前に「虎」の文字を入れたのは本当である。ちなみに、出生届けを出しにいった区役所では、もう一文字の方にも「そんな読み方はありませんので、おすすめできません」とやんわり反対を食らったが、そこは昔からのサッカー仲間、川平慈英さんスタイルで押し切った

 「いいんです!」

息子の名に「虎」を入れた本当の理由

 さて、猛烈な逆風に遇いながら、それでも「虎」にこだわったのは、わたしが阪神ファンだからである。

 8年前に家を新築した際は、これまたヨメの大反対を押し切って門扉にタイガースのエンブレムを刻み込んでもらった。
 9年前、日本シリーズで4敗目を喫した際は、敗色が濃厚になってきた試合の終盤から禍々(まがまが)しく泥酔していき、ついには3匹いるダックスフントのうちの1匹をヨメめがけて投げつけたのだという(本人はまるで自覚なし)。普段、犬を愛し、ヨメに怯えている人間をそこまで変えてしまうほどの力が、阪神タイガースにはある。

 なぜここまでの熱狂的なファンになったのか。遠因は小学校時代に神戸での生活を経験したことにあるのだろうが、一番大きいのは、1985年の優勝である。阪神にとって唯一の日本一となった年である85年は、実は日本サッカーが初めてワールドカップ出場に王手をかけた年でもあった。そして、満員の国立競技場で木村和司さんが伝説のFKを叩き込んだ日は、日本シリーズの第1戦、西武球場でバース様が3ランをブチかました日でもあったのである。