まずは、事業者や地主など供給側の理解を深めることが必要だ。確かに供給側は普通の賃貸住宅をつくったほうが楽。ただ「コレクティブハウスには地域貢献という意義や特色のある住まいとして空室を抑えられる利点があることも知ってほしい」(宮前さん)という。

 ただ、「かんかん森の28戸というのは意見を一本化するうえで大きすぎる。もう少し小規模なほうがよいかもしれない」(生活科学運営の浦田慶信社長)という声もある。また「居住者と事業主・大家の間を取り持つ第三者的なコーディネーターも育成すべき」(宮前さん)ともいう。

行政も興味を示す

 かんかん森設立にかかわった日本女子大学名誉教授の小谷部育子さん(住居学)は「子育て支援や高齢化対応にも役立つ住まいとなれば、コレクティブハウスを行政がもっと支援してもよいはず」と語る。実際に興味を持つ公的機関も出てきた。群馬県前橋市に2013年、できたのは県住宅供給公社がつくった公的なコレクティブハウス型賃貸住宅。東京都も公営住宅への導入に関心を示している。

 小谷部名誉教授は「コレクティブハウスは個人にとっても社会にとっても可能性のある住まい。定着させていきたい」と話している。

(文/日本経済新聞社編集委員 山口聡)