当初、かんかん森の住民はそれぞれ個別に大家である生活科学運営と賃貸借契約を結んでいた。一方、かんかん森の住まいのルールは、居住者の総意で、居住者組合が決めることになっている。住まいのトラブルがあれば、居住者組合が代表して大家と話し合うのが原則。ところが住民が個別に大家と交渉するなど、交渉の窓口が一本化せず、運営全体が揺らいでくるという問題が出てきた。

 この問題は結局、住民有志が会社を設立し、その会社が生活科学運営からコレクティブハウス部分を一括して借り上げるという方式をとることで落ち着いた。個々の住民はこの会社と賃貸借契約を結ぶことになった。ここに至るまでにも住民間で様々な議論があった。

 一筋縄ではいかなかったが、2011年3月の東日本大震災できずなや助け合いの大切さが見直された。また最近では、社会における女性の活用の中で子育てしやすい環境が改めて見直されてきた。様々な経験や世の中の流れを受け、「今、かんかん森のコミュニティーは成熟してきた」と多くの関係者が認めている。

「潜在的な需要はある」

 これだけ手間暇のかかる住まいなので、そう簡単には普及しない。NPOコレクティブハウジング社が開設にかかわったコレクティブハウスはかんかん森を含めて、東京都内を中心にこれまでに5つ。「コレクティブハウス」と銘打つ集合住宅は全国に他にもあるようだが、「住民による自主運営を厳密に実施している所はほとんどないと思う」(同社の宮前真理子共同代表理事)という。

 かんかん森以外には、東京の巣鴨、聖蹟桜ヶ丘、大泉学園、群馬県前橋市にある。これらのコレクティブハウスに入居したい場合にはそれぞれに問い合わせて、空室があれば原則可能だ。入居待ちのウエーティングリストに登録するところもある。同社では関心がある人向けにオリエンテーションやハウスの見学会も開いている。新しく立ち上げる計画に参加することもできるという。

 かんかん森の住民たちの多くは「このようなところに住みたいという潜在的な需要は結構あるのでは」という。数を増やしていくにはどうしたらいいのだろうか。

住民たちが育てる、かんかん森のガーデニングコーナー
住民たちが育てる、かんかん森のガーデニングコーナー