会社員の田中治さん(41、仮名)も会社員の妻(38)と長男(6)、次男(1)の4人家族。「東日本大震災と原発事故があって、隣の人もよく知らないマンション暮らしで助け合ったりできるのだろうかと不安になった」とき、かんかん森を知り、空き部屋があったので入居した。子育てに関連して、「子どもの服やおもちゃなど、使わなくなったものを必要な世帯に回すリサイクルも盛んなので経済的にもすごく助かる」という。

 単身の住民も多い。会社員の藤原敬一さん(47)は「面白そう」と7年前に入居した。入居してからの発見は「実は自分が子ども好きだったこと」という。ときどきリビングで子どもたちの相手をするのもいい気分転換。「ここはシングルにとってもほっとできる住まい」と話す。

 同じ建物内の有料老人ホームに住む元気な高齢者がかんかん森にやってくることもある。川島和夫さん(79)はそんな一人。コモンミールの常連でもある。「晩年を縮こまって過ごすのではなく、できるだけ知り合いの輪を広げたい」のだという。かんかん森の子どもが川島さんの部屋を訪ねることもあるそうだ。

さまざまな助け合いの可能性が

 少子化と並ぶ日本社会の課題である高齢化。こちらの面でもコレクティブハウスの助け合い機能は期待される。「助けてもらうのが目的でここに入居されても困るが、ここの暮らしに貢献してきた人が年をとったときには様々な助け合いの可能性が出てくると思う」(住民の坂元さん)。

 かんかん森に入居するには、まず見学会やコモンミールに参加する。ルールを理解したうえで入居することが必要だ。部屋の広さは25~62平方メートル。家賃は7万1000~14万8000円。共益費は大人1人なら7000円、2人なら1万1000円。ただ2013年11月末時点では満室だ。

(12月27日公開予定の後編記事に続く)

(文/日本経済新聞社編集委員 山口聡)