かんかん森は、ワンルームから2DKまで、28戸からなる集合住宅。それぞれの住戸にも台所、トイレ、風呂などはあるが、住民が管理・運営する共用のリビングダイニングキッチンなどを備えるのが特徴。この広い共用部分を住民が自主管理し、コミュニティー作りに役立てるのが「コレクティブハウス」。コモンミールは住民同士のつながりを深める柱だ。このほか、月1回の定例会では全住民が参加して共用部分の利用ルールなどを議論。掃除やガーデニングなども住民で係や当番をつくって自前で実施している。

共同の食事会「コモンミール」の準備を共同のキッチンで進めるかんかん森の住人達
共同の食事会「コモンミール」の準備を共同のキッチンで進めるかんかん森の住人達

 現在、かんかん森には0~88歳、単身者から子どものいる家族まで総勢約50人が暮らすが、コモンミールなどのおかげで全員がお互いをよく知る存在。子守や買い物、趣味などちょっとしたことでも声を掛け、助け合ったり、共に楽しんだりする関係が生まれている。

 コレクティブハウスは働く女性にとって合理的な住まいとして、1960年代ごろからスウェーデンで始まったという。日本では90年代前後から女性建築家らのグループがスウェーデンの視察などを通して導入を検討し始めた。

 この動きに有料老人ホーム経営の生活科学運営(東京・新宿)が共鳴。同社が新たな老人ホームを建設する際、その一部にコレクティブハウスを組み込むことを提案して、2003年に日本初の本格的コレクティブハウス「かんかん森」が誕生する。

ちょっと子守を頼めるのが心強い

 設立当初の関係者で今の住民でもある坂元良江さん(75)は「自分たちは共働きで子育てにとても苦労した。だから次の世代の女性が、働くことも子育ても楽しめるような住まいをつくりたいというのが、かんかん森設立の一つの動機」と話す。現に約50人の住民のうち、子どもは12人おり、毎年のように赤ちゃんも生まれている。