待ち望んだ女の子が誕生したのは、2012年4月。「生まれてからの数カ月は『保活』のことを考える間もないほど育児に追われ、そんなに不安を感じることもなかったんです」と星野啓介さん(仮名)は振り返る。

 杉並区で産休中から「保活」を始めたものの、厳しい状況に心も追い詰められていく妻を案じて、保活を休止(前回の記事「『保活』で臨月の妻が眠れなくなりました」)。出産の日を迎えた妻は子育てが楽しくてたまらぬようだった。

 取りあえず認可外保育所は出産前に15件ほど申し込んでいたので、「そろそろか?」と0歳児で空きが出るのを待っていたが、どこからも連絡は来ない。妻も「子どもと一緒にいる時間を大事にしたい」と、育休を早めに切り上げるのはやめた。

 それでも産後半年を過ぎるころ、星野さんは申し込みをした保育所に確認の電話をしてみた。すると、「まだ満員です」との返事。待機リストに登録していたはずが、中にはリスト漏れしていたり、0歳児なのに1歳児に登録されていたりするところさえあった。さすがに不安が募り、新たに幾つか申し込んでみたが、どこも数十人待ちは変わらなかった。

すがる思いで署名活動を始めた妻

 やがて11月になり、いよいよ翌年4月入園の申し込み受け付けが始まる。妻と一緒に保育課へ行き、入園申込書と勤務証明書などの書類を提出した。