そこには、「受かったよ!」とひと言。

 その後すぐ、家に電話すると、妻の声はひときわ明るかった。何カ月ぶりだろうか。あんなに明るい妻の声を聞いたのは。入園が内定したのは、かつて夫婦で見学して第1希望で出した近所の保育園。妻は、「内定通知」という言葉を見た途端に号泣したらしい。「思わず、僕も涙があふれ出ましたよ」と星野さん。

 後に知ったのは、希望した保育園は応募167人中内定11人。内訳を見ると、指数「40点満点」の家庭は124件で、そのうち9人が決まったという難関だった。どうして、うちが入園できたのか。おそらく、妻の勤務が朝10時から夜7時までなので延長保育が必要で、夫も夜勤のある不規則な仕事だということ、夫婦共に他県に実家があることなどが考慮されたのかもしれないが、それにしても「奇跡みたいだった」(星野さん)。こうしてかくも厳しい「保活」の日々を、星野さんはこう振り返る。

 「子どもを保育園に預ける選択をした親は、みんな、同じような苦労を味わっている。“ここまで保育園に入るのが難しい。それって、どうなの?”と。認可園に入れず、認可外へ預けると保育料の負担はもちろん大きくなるし、もし預け先が見つからなければ仕事をやめなければならない人もいる。家族の生活やその後の人生にもかかわるだけに、なんとかならないものかと思います」

杉並区の母親たちの一揆の先に光は差すのか

 2013年度、星野さん一家が住む杉並区で認可保育園の入園を希望し、一次選考に漏れたのは約1800人。保活するママたちが結成した「保育園ふやし隊@杉並」の呼びかけによって、抗議集会や異議申し立てが行われ、保育園増設などの要望を提示してきた。その後も「保育園ふやし隊」は保活の交流会などイベントを開催。「パパ」の参加はまだ少ないけれど、星野さんも妻と共に事務局に携わり、今も活動を続けている。