「ネットやミクシィなどで保育園のコミュニティがあって、僕らもたまに見ていたんです。いろんなうわさも流れていて、入園申し込みをするときは〈○○の事情で大変なので、どうかお願いします〉という請願書を添えるとよいとか。結局、うちは添えなかったけれど……」

 そのころ、妻は保健所の定期検診で会ったママに声をかけられた。杉並区に「○○小学校の跡地に認可保育園を作ってほしい」という陳情書を出すため署名を集める活動をするので、一緒に参加しないかという誘いだった。もともと政治などにあまり興味のない妻が、このときばかりは真剣に取り組み、月に何度か活動があると子どもをおぶって出かけ、街頭でチラシを配りながら署名を集めた。そんな妻の必死な姿を見て、星野さんもできるだけ参加して、呼びかけを手伝った。

 「妻としては願掛けじゃないけど、“自分一人で100人集まったら、保育園に入れるんじゃないか”とすがる思いもあったようです。妊娠中も眠れない夜が続いたように、選考結果の発表が近づくにつれて心細さが増しているのが分かり、なるべく力になってやりたいと思ったんです」

保育園に入れなかったら、引っ越しか親と同居か

 そんな夫の胸中には、妻に「申し訳ない」という気持ちが絶えずあったともらす。そもそも2人が出会ったのは、星野さんが最初の会社をやめて休職中のこと。大手メーカーでシステムエンジニアを務めていたが、月200時間以上の残業をこなすハードワークが5年ほど続くうち、心身に無理が生じた。その後、復職するも病気を再発して退職。最もつらい時期を支えてくれたのが彼女だった。

 新たな職場を探して、警備関係の仕事に落ち着いたところで結婚。シフト制の不規則な勤務だが、夜勤明けで家にいられる日は「保活」も手伝うことができた。