もうすぐ出産なのに、「保活」で前向きになれない妻を思って

 「子どもを身ごもるって、ハッピーなことなはずです。妻は最初は自分のお腹をさすって、ニコニコしていたけれど、そのうち普段の顔も不安そうで笑顔も少なくなっていく。彼女は裁縫が好きで、子どもに服を縫ってあげたいと嬉しそうにやっていたんですが、それも手につかなくなり、前向きな気持ちでいられないのが辛そうだった。何より“こうして不安になることで、お腹の赤ちゃんにも影響があるんじゃないか”と妻はしきりに気にしていました」

 このまま「保活」を続けることがいいのだろうか。既に15カ所ほど申込んだが、どこも数十人のキャンセル待ちは変わらず、あとはどんどん遠方に広げるしかなかった。

 「不安が募るだけだから、いっそストップして、子どもを産むことに専念したほうがいいんじゃないか?」―星野さんは思い余って妻に提案する。

 それでも当人は「もし決まらなかったらどうしよう」としばらく悩んでいたが、二人で話し合いを重ねて、ついに心を決めた。

 とりあえず保活は止めて、出産の日を迎えることにしよう‥‥と。

(後編へ続く)

(ノンフィクション・ライター/歌代幸子)