小雪が舞う2013年2月18日、赤ちゃんをおぶった女性たちが杉並区役所前に詰めかけた。2013年度の同区の認可保育園の選考結果を受け、入園の不承諾通知を片手に母親たちが声をあげたのだ。

 杉並区が募集した2013年度の認可保育園の定員は1135人。その3倍近い申し込みがあり、一次選考では約1800人が入園できない状況となる。そこから母親たちの“一揆”ともいわれる活動が広がった……。そうした激戦区で「保活」(保育園入園のための活動)の渦に巻き込まれた、ある夫婦の体験談を二回に分けてお届けする。

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 妻が妊娠するまで、「保活」の厳しさを意識することはなかった。「まさか、わが子をこの腕に抱いていないうちから子どもの預け先を探すことになるなんて」――そう、ため息交じりに話すのは、妻が妊娠中から「保活」に取り組むことになった新米パパ・星野啓介さん(仮名)だ。

妊娠中から始まった保育園探し

 都内でも“激戦区”といわれる杉並区に住む星野さんが、妻から妊娠を告げられたのは2011年の夏。待機児童問題のニュースは聞いていたが、何とかなるだろうと気楽に構えていた。

 だが、あるとき、勤め先から帰ってきた妻は浮かない顔をしてこう言った。「同僚の○○さんは育休を延長しても保育園が見つからず、退職してしまったの」。―「そこで、もしかして“うちもヤバいんじゃないの?”と気になり出したんです」。