でも、子どもが生まれて、仕事が思うようにできなくなって、つくづく自分は「仕事がだーい好きだ」ということに気がつきました。

 仕事を通じて、クライアントさんをはじめ、いろいろな分野の一生懸命な人に出会うことが大好き。その人たちと、結果を出すために真剣にものを考えるのが大好き。よい結果がでて、その喜びをクライアントさんやスタッフと分かち合うのが大好きです!

「頑固なおじいさん」が仕事のお手本

 もう何年も前のことですが、あるテレビ番組でカリスマ介護士と言われる方のドキュメントを見ました。その介護士さんが、手ごわいおじいさんを担当することになったときの話。

 おじいさんはアルツハイマー型認知症がかなり進行していて、脳をレントゲンで見るとかなりスカスカの状態。家族の顔を見ても反応できない状況でした。奥さんが現れても、息子さんが現れても、笑顔ひとつ見せることなく、険しい表情のまま。介護士さんは、どうやったらそのおじいさんに笑ってもらえるか、考えに考えて、ある作戦に出ました。

 介護士さんは、おじいさんの前で、かつておじいさんが手がけていた仕事を再現することにしたのです。おじいさんは、かつてガソリンスタンドの経営者だった。それに着目し、介護士仲間を巻き込んで、ちょっとした出し物をしたのです。

 ガソリンスタンドのユニフォームに身を包んでおじいさんの目の前に立ち、段ボールで作った車や給油機を使って「オーラーイ、オーラーイ!」「かしこまりました。レギュラー、満タンですね!」と明るく大きな声で劇をすると…。それまで、家族にさえも反応しなかったおじいさんの顔が、みるみるうちに高揚し、声を出して笑い出したのです。涙を流しながら。

 私は、テレビでその様子を目の当たりにし、びっくりしました。そして、「仕事の力ってすごいな」「どうせ仕事をするのなら、こんなふうに一生懸命やりたいな」と思ったのを覚えています。

 このストーリーは、ことあるごとにスタッフにも話しているのですが、まさに私がおばあちゃんになったら、このおじいさんのようになるのではないかな、なんて真面目に思ったりします(私は家族と仕事の両方に反応したいですが!)。私にとって仕事とは、自分の成長度合いを測ることのできるかけがえのないものであり、自分にとっての存在価値のようなものなのです。

出張、勉強、スタッフとの会話、子どもとの触れ合い…、全部やりたい!

 そんな私の今の悩みは、「やりたいことがたくさんあるけれど、全部できないこと」。