横軸に女性の年齢、縦軸に就業率を置き、年齢別の就業率をグラフにすると、20代と40代以降の就業率は高いが、子育て期に低くなるM字カーブを描く。女性にとって仕事と子育ての両立が難しい日本独自の現象として広く知られている。

年齢別の就業率をグラフにすると、20代と40代以降の就業率は高いが、子育て期に低くなるM字カーブを描く(総務省「2012年就業構造基本調査」)
年齢別の就業率をグラフにすると、20代と40代以降の就業率は高いが、子育て期に低くなるM字カーブを描く(総務省「2012年就業構造基本調査」)

 人口が減り始めた日本にあって、女性は貴重な働き手だ。政府は2013年6月に今後日本の進むべき方向を示す「日本再興戦略~JAPAN is BACK」をまとめた。その中で「女性が働きやすい環境を整え、社会に活力を取り戻す」と明記。その実現に向けて女性の職場復帰・再就職支援を具体的な対策として掲げた。女性の就業率アップにも本気で取り組む姿勢を示している。

 ただ一人ひとりの女性の視点に立てば「就業率アップ」はゴールとは言い切れない。働く目的は〝お金〟だけではなく、働きがいも大切な要素。理想はそれぞれの能力と希望に見合う仕事に就けること。だが、現実は厳しい。

 女性の就業状況を年代ごとに比較すると、20代と40代以降は就業率がほぼ同じ水準だが、働き方の〝質〟は異なる。若い世代は正社員比率が高いものの、40代以降はパートなど非正規社員比率が格段に高くなる。

若い時分は正社員比率が高いものの、40代以降はパートなど非正規社員比率が格段に高くなる(青の部分が正社員)(総務省「2012年就業構造基本調査」)
若い時分は正社員比率が高いものの、40代以降はパートなど非正規社員比率が格段に高くなる(青の部分が正社員)(総務省「2012年就業構造基本調査」)

 欧米ほど転職市場が育ってなく、終身雇用が根強い日本では1度仕事を離れると、企業社会で正社員の地位を再び手に入れるのは容易ではないからだ。

「ブランクが長いから」と尻込みしないで

 パートや派遣社員といった非正規の働き方は仕事の負担や働く時間をセーブしやすく、仕事と家庭の両立を図りやすい利点もある。ただすべての既婚女性がそのような働き方を望んでいるわけではない。

 「入学選考で受講希望者と面接すると、輝かしいキャリアを持つ優秀な人材が家庭で眠っているのが分かり、驚かされる。彼女たちを生かせないのは社会的な損失でもある」と語るのは日本女子大学リカレント教育課程の高頭麻子所長(日本女子大学教授)。「女性たちも『ブランクが長いから』などと尻込みしないでほしい。チャンスをつかみ、勇気を持って羽ばたけるように私たちが背中を押してあげたい」とエールを送る。

(文/日本経済新聞社編集委員 石塚由紀夫)
※文中のカタカナ表記は仮名