「仕事と子育ての両立」―これまではもっぱら女性たちが悩んできたテーマが、今、男性の眼前に迫っている。親も上司も先輩も経験してこなかった境遇。まだ「男は仕事をしてナンボ」の組織の中で働きにくさや孤独感を感じつつ、会社では悩む姿をおくびにも出さず、重圧にも笑顔で耐えている…。

 働きながら子育てをする男性たちの日常、そして滅多にもらさない彼らの汗と涙と笑顔の本音を、書籍『男たちのワークライフバランス』からお届けします。

 平日の午前8時。会社員である新藤さん(仮名・33歳)の朝は、3歳の息子を自転車で保育園に連れていくことから始まる。

 息子は靴や上着、自転車用のヘルメットも自分で身につけたがる。玄関の鍵開けやエレベータの呼び出しボタンを押すことも、自分でやらないと気が済まない。ダダをこねる時もあるので、そのたびに新藤さんはため息をつきながら腕時計に目をやる。

 「これで3分のタイムロスだ」

 自転車で坂を一気に駆け上がり、保育園に子どもを預け、駅の駐輪場に自転車を置いて、始業に間に合う電車に乗る。これらのことをわずか20分間で済ませなければならない。道すがら「うまく青信号が続きますように」と祈るばかりだ。

 平日はほとんどこんな朝が続く。

遅刻が重なりペナルティを

 雨の日や、早朝出勤の日、前の晩あまりに遅くて疲れが取れない時などは、代わって妻がこの役割を果たす。保育園への“お迎え”はすべて妻の役割である。自分で会社を立ち上げた妻は、打ち合わせや会合が入っている時などは母親に田舎から出て来てもらい、息子の迎えを任せる。