来年、「大阪市立びわ湖青少年の家」は廃止か売却が決まりかけている。少なくとも、市は事業として廃止予定だ。スタッフの方達の行き先は、まだわからない。来年度、私たちの自然体験先もどこになるか探している途中だ。

 廃止の理由は、府市統合により「海洋センター」という臨海合宿施設と役割が重なること、赤字経営であること、冬に稼働率が落ちるために平均した時の稼働率が低いこと、費用対効果が見えにくいことだ。

 確かに、海洋センターにもカッター漕艇のプログラムはある。しかし、夏は短い。利用が重なると抽選になる。落ちれば、その年の自然体験先にまた困る。せっかく電車で行ける距離に琵琶湖という財産があるのだから、できれば活用したい。東日本大震災後、津波のない琵琶湖に臨海学校を変更する小学校も出てきている。大阪市外からの問い合わせが増えたそうだ。

自作のいかだを浮かべて、班ごとに漕ぎ出す。琵琶湖は波が少ないので、転覆の心配も少ない。自然の危険と豊かさを感じ、子ども達は一気に成長した
自作のいかだを浮かべて、班ごとに漕ぎ出す。琵琶湖は波が少ないので、転覆の心配も少ない。自然の危険と豊かさを感じ、子ども達は一気に成長した

 「学校からの利用料設定が条例で決まっていて安すぎるのも、実は悩みの種です」と所長の清水敏行さんに教えていただいた。全日程、食事も交通費も活動費も込みで上限が1万5000円。地域によっては、保護者負担を1万円超えると参加率が減ってしまう。今回、宿泊費・食費・活動費すべてを含んで6000円程度で2泊3日を過ごせた。有り難いが、正直なところ安過ぎるとも思う。

 基本的な価格設定を見直し、経済的に厳しい家庭には参加補助を出す。それだけでも赤字はかなり改善できる。では、民間に委託すればという話になるが、ヘタなやり方をすれば、黒字になる前に維持できず潰れてしまう。それはあまりにも、もったいない。何年も通って子ども達の成長を見てきた教師も、心から惜しがっていた。

 冬の稼働率が低いのはある意味当然だが、合宿所としての活用招致で奮闘している。室内プログラムで、滑石を削って勾玉(まがたま)を作るクラフトも体験した。理科の学習につながり、思い出にもなるいいプログラムだった。ここでも江島さんが子ども達の独創性を褒め、励まして作業に夢中にさせてくれた。

教育効果は「数値化」できない

 翌日のいかだ作りでは、自分達で頭を使ってタイヤチューブと板とひもでいかだを組み上げて、湖面に浮かべた。明らかに、来た時より手際がいい。誰が材料を取りに行くか、ひもをどう結ぶか。失敗したら、改善案を出してすぐやり直す。早くしなければ、湖面に浮かべられない。

 沖の監視員イスに座っている教師めがけて、自分達で作ったいかだをこぎ出す。昨日のカッターより、オールは軽い。その分、こぐ力のバランスが悪ければ簡単に方向が変わる。私も乗せてもらい、声と力を合わせてこいだ。