水難事故を防ぐために、5、6年で着衣水泳を実施。ずしりと重くなった服の重みで、プールサイドに上がるのも苦労した。子ども達はいつも以上に、指示をよく聞いていた。「命を大切にするための授業」として、敷津小学校の夏の定番にしたい
水難事故を防ぐために、5、6年で着衣水泳を実施。ずしりと重くなった服の重みで、プールサイドに上がるのも苦労した。子ども達はいつも以上に、指示をよく聞いていた。「命を大切にするための授業」として、敷津小学校の夏の定番にしたい

 現場レベルで解決しようとすると、忙しい教職員に遠慮があって頼めない。修学旅行先は、2年先まで行程が決まっていた。学校行事も人事もガチガチに固まっている中に、知識も信頼関係も丸腰の民間人校長が来て、一体何ができるのだろう。

 本気で私たちに改革を求めているなら、配属先の学校そのものを「改革推進指定校」にしてはどうか。

 「指定校には民間人校長が来ます、その代わり『ヒト・モノ・カネ』の自由度を高くします、スケジュールもある程度は動かせます、大きな改善に人手が必要なら送り込みます」

 手続きを簡素にし、金銭の使い方を柔軟にすることで、ようやく「校長経営戦略」の文字に意味が出てくる。それなのに、手続きは相変わらず古いままだ。その点を、退職した校長は「『新しい風』と言うけれど、改革の具体的なビジョンが見えない」と指摘していた。

民間人校長による「オリジナル改革」は不要!?

 「市長が公募せよと言いました、制度を慌てて作って、格好のつく人数を選びました。市長が辞めたら、この制度は無くなるでしょう。無難に任期を務めてもらえれば結構です」

 行政側には、こんな本音の人もいる。もしかしたら、大多数かもしれない。着任当初は意気込んでいたが、スローペースに慣れてきた自分がいる。

 来年度、「公募校長のくせに土曜授業を増やさないのか」と、おそらく私は行政側に叱られると思う。

 保護者に聞くと、習い事があるので困るという。私も保育園に子どもがいて、平日が埋まっているからわかる。習い事のチャンスは、土日しかない。そして、多くの習い事が土曜日に集中している。

 サッカー選手を目指してプロ志向のサッカークラブに通う子、3歳からずっとピアノを習っている子。……彼らのチャンスを奪っていいのだろうか。

 また、土曜出勤にするなら、平日に担任でも休める施策とセットにしてほしい。最初から平日のどこかで担任が休めるような、「スクランブル授業」の日を作ってはどうだろう? 最低でも月に1度、または2週で1度。

 私の配属された小学校は、1学年1クラスの単学級のため、担任外の先生に習う機会はいい刺激になるだろう。また、複数の目でクラスを見ると、トラブルの種を見つけやすくなる。子どもたちには、相談しやすい先生が増えるメリットもある。

 ベテラン教職員が「ありえない」「無理!」という案でも、出し続けることに意味がある。今の私には、大きく変えるだけの力はない。バックアップもない。それでも、素朴な疑問を投げ続け、教職員と話し合って解決策を導くことを諦めない。そのために、私はこの学校に呼ばれたのだと思っている。

 早起きにも給食にもすっかり慣れた。戻りたくて戻った教育の現場は、楽しい。しかし、同期の退職に、改めて民間人校長の意義を突きつけられた。「任期終了まで無難に『こなす』だけでいいのか」。彼の残した置き土産は、私にとって「宿題」だ。

 何をしたかったのか、何ができたか、なぜできなかったのか。

 ふりかえって整理して、また次の課題に向けてしつこく粘るしかない。