――お子さんが3人もいると、洗濯物の量もすごそう!

 「いやいや、洗濯物より3人が保育園・幼稚園・小学校とバラバラに通っていた時の『明日の用意』のややこしさの方が大変だった。プリントもスケジュールもどれが誰のか混乱状態で(笑)。ウチでは、子どもが忘れ物をしても届けません。私も学校に行っているので届けられないという事情もあるけれど、『忘れて困ったらええねん』と思っています。困れば、だんだん自分で気をつけるようになるから」

――確かに、忘れ物をしても誰かが届けてくれる、先生が貸してくれる、という経験が当たり前になると、『忘れ物=いけないこと』という意識にならない。『ホンマに困った経験』をしたら、2度としないよう気をつけるのは、大人も一緒ですね。

 「失敗してもいいので、とにかく任せる。意外にできるし、こっちも楽です」

――学校の給食当番も、必要な教育やなぁと思って見ています。あんまり失敗はしてほしくないのが本音だけれど(笑)

 「給食を係に渡して教室へ持って行ってもらう時が、一番緊張するポイントです。『午前中かかって一生懸命作ってんで、絶対にひっくり返さんといて!』と念をこめて渡しています。おかずやご飯の入れ物をひっくり返す事件、毎年起きるんです」

食器を返しに来る時の表情、残っている量で子どもたちの好みや適量を観察している。笑顔で「おいしかった」と言われると、やはりうれしい
食器を返しに来る時の表情、残っている量で子どもたちの好みや適量を観察している。笑顔で「おいしかった」と言われると、やはりうれしい

――柴田さんたち、給食調理室からの『愛』を無事に教室に届けてもらわないと困ります!……最後に、ここ数年の給食の変化を教えてください。

 「年々、子どもたちが喜ぶように複雑なメニューが増えてきました。来月はパエリヤがあります。新メニューはうまくできるか、少し緊張するんですよ」

――パエリヤ、楽しみだなぁ。家でもなかなか作らないメニューが食べられるし、給食をヒントに「こんな野菜の食べさせ方があるんだな~」と参考になるので、働く親としても満喫しています。これからも、敷津小学校の台所をよろしくお願いします!

「給食の時間が楽しい」と思える学校に

 学校給食は、貧困による子どもの栄養不足を補うのが当初の目的だった。食生活が豊かになった今は、食事マナーや食育といった視点で継続しているのが建前だ。

 しかし、現実には給食が無くなる夏休みに、やせる子どもが存在している。あちこちの小学校で耳にした。給食開始当初の目的である「児童の欠食を補う」命綱になっているケースもあることを知ってほしい。食べつけない野菜や魚を何とか食べてほしいという願いが、献立を考える栄養士さんの知恵、現場で仕上げる給食調理員さんの仕事にこめられている。

 栄養不足だけでなく、給食には「心の栄養不足」を補う意味もあると思う。親しい人と、話をしながら出来たての食事を囲む。一日のうち、「温かな食卓」は給食だけという家庭がある。私自身、朝も夜も子どもと食べられない日がほとんどだ。自分の家庭に対する葛藤を抱えているだけに、給食の時間を「うれしい時間」にしてやりたい。クラスに居場所のない子は、給食もおいしくないはずだ。自分がかつて、そうだったから。温かい学校を作るのが、私の仕事だ。

 給食調理室から届けられた愛を、ひっくり返さないように、こぼさないように。クラスのみんなで分け合って、今日も手を合わせよう。「いただきます!」