トレイシー・バルサザール=フリン
ソニー・ピクチャーズにおいて、テレビ・アニメ「Extreme Ghostbusters」や「ゴジラ ザ・シリーズ」のカラー・デザイン・スーパーバイザーなどを担当した後、人気アニメ「スターシップ・トゥルーパーズ」などの作品で、CGプロダクションにおける管理面の仕事を担当。

 その後、ウォルト・ディズニー・スタジオに引き抜かれ、「ピーター・パン2/ネバーランドの秘密」「バンビ2/森のプリンス」などのディズニートゥーン・スタジオによる長編アニメーションで、テクニカル・ディレクターやCGアーティストを監修するデジタル・プロダクション・マネージャーに就任。現在、ジョン・ラセターのリーダーシップのもと、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの一部門であるディズニートゥーン・スタジオの作品製作をサポートしている。

大人は実写に負けない迫力を、子どもは夢を追う姿を楽しんで

――「プレーンズ」は、子どもはもちろん、大人も楽しめて、共感できる部分がたくさんありました。どんなに障害がたくさんあっても、夢を諦めないことの大切さが伝わってきましたが、トレイシーさんはこの映画のどんな部分が気に入っていますか?

 「高所恐怖症を克服して、いろいろな障害を乗り越え、自分の大きな夢に向かって羽ばたく主人公ダスティ。彼の姿は、誰もが共感できると思うし、私も一番共感している部分です。自分の夢をかなえるまでには、様々な障害が待ち構えているかもしれない。それでも夢は、決して諦めずに追う価値があるもの。夢というものは持つべきもの、というメッセージがこの映画にはあります。特に、働くママやパパは毎日夢を見る暇もないくらい忙しいかもしれませんが(笑)、夢を持つことは決して忘れてはいけないんだと、本作を通じて伝わればうれしいです」

――大空を舞台に主人公が世界一周レースをするというストーリーはスケールが大きく、実写映画に負けないほどの素晴らしい映像です。トレイシーさんがプロデューサーとしてこの映画で特にこだわったことはありますか?

 「この映画の最大の魅力は、やっぱり飛行シーン。だから、飛行シーンを描くということには徹底的にこだわりました。ものすごくたくさんリサーチをしましたね。特に音響に関しては、実際の飛行機にマイクを付けて、エンジンの音や飛ぶ音などの生の音を録音し、それをそのまま使用しました。それくらいリアルさにこだわっています」

 「ビジュアルも、プロペラの回転や、旋回をするときの傾き加減、後ろのテールの部分が動くところなど、細かいディテールに至るまで、さまざまな専門家から話を聞いてリサーチし、現実を反映させました。また、会話に出てくる専門用語は、実際のパイロットたちの会話を聞いて、それを使っています。子どもだけではなく、大人の観客、航空ファンや飛行機オタクまで(笑)、十分に楽しめるようにこだわりました」

――ダスティをはじめ、バラエティーに富んだキャラクターが魅力的ですが、キャラクターたちはどのようにして生み出されていったのですか?

 「キャラクター設定を考える際には2つパターンがあって、1つはもともとある飛行機の機種に基づいて、そこから性格付けする方法。例えば、スキッパーは“コルセア”という世界大戦で活躍した旧式の戦闘機がモデルになっているんですが、非常に独特のシルエットで、いかにも厳格で強そうなイメージなので、キャラクターにピッタリでした。エル・チュパカブラは、ぼてっ腹でユニークなイメージが、大胆で華麗なキャラクターに反映されていると思いますし、女性の飛行機は女性らしい曲線であるといった、飛行機の形状がそれぞれのキャラクターの特徴や性格ににじみ出るようにしました。もう1つは逆に、先にキャラクター設定を決めて、それにピッタリ合う実在の機種をあてがう方法ですね」