夫の海外赴任…そのとき私は!?

 勤務先のテレビ局の上司、先輩、同僚への退職の挨拶も終え、娘を保育園に迎えに行き、引っ越し準備中のわが家に帰宅した。仕事をしながらの赴任準備は予想以上に大変。昼間しかやっていない役所などへの手続きは、なかなか進まない。

 このコラムでは、東京でTVディレクターをしていた私が、家族(夫、娘、私の3人)全員で海外で暮らすことになってからの出来事を書いていきたい。初回のテーマは、なぜ、私たち家族が突然、海外に行くことになったか。

 わが家に夫の海外赴任の話がやってきたのは、厳しくも楽しい共働き生活を謳歌していた時のことだった。夫婦どちらかが単身赴任を選択するか、それとも片方が退職しての同行か…この選択を迫られる夫婦は、確実に増えている。産後も働く母が増え、共働き夫婦がスタンダードになってきたからだ。

 私たち夫婦も例外ではない。共働き生活も5年目。不規則だがフレキシブルな私のテレビの仕事と、基本的にカレンダー通りの夫(一般会社員)との家事・育児分担もスムーズにいくようになっていたのに…。

 共働きだからこそ、海外での仕事に挑戦したい夫の気持ちも分かる。これからの時代、必要なキャリアだとも思う。任期も短くはない。子どもが未就学児から小学生の間は、特に家族は一緒がいいだろう。あわよくば2人目も欲しい。医療や教育も含め、赴任先であるタイの首都バンコクの住環境は文句ない。答えは出ている。

 でも…。すぐに会社を辞めるという決断はできない。

出国直前に娘が描いた家族3人の絵。その時に私が持っていたペンを使ったので色数が少ない
出国直前に娘が描いた家族3人の絵。その時に私が持っていたペンを使ったので色数が少ない

 最初からブレなかったのは、当時まだ4歳の娘だった。私たちが何度聞いても、「お友達と離れるのは寂しいけれど、パパがひとりぼっち(単身赴任)になるのが一番かわいそう。だから、私はパパと一緒に行く」という泣けるコメント。まだ事の重大さを分かっていないからという理由はさておき、これは4年間ずっと育児を頑張ってきた夫へのご褒美なのだと考えることにした。娘がママもパパも同じように働き、同じように自分の傍にいる人だと思っている証拠だ。

 一度、とてつもなく会社を辞めたくない衝動に突き動かされた私が「ママ、東京に残ろうかなぁ」と呟いたら、「じゃ、ママは残っていてもいいよ。私はとりあえず行ってくるね」との返事が返って来たほど、夫と娘の絆は固かった(涙)。

単身赴任から1年後に出た結論

 いくら娘が同行を宣言していても、簡単に決断したら後悔するような気がした私は、最初の1年間、夫に単身赴任してもらうという選択をした。