約1年前から始めている保活とは何なのか? 「保育園選び」なんて存在しないじゃないかと悟った。自分の仕事や生活のスタイルにぴったり合った教育方針に共感できる、保育士の質がいい……、そんな保育園を「選ぶ」ことなど夢のまた夢。最低限の条件をクリアしている保育園に入園すること自体が困難を極める。入れてくれる保育園にすがるしかない、それが現実だった。だまされたような気分と、愛する子どもを安心して預け、普通に働くことがそんなに悪いことなのかという悲しい気分にさいなまれた。

 2011年、私が住む区では1歳児300人の枠に1000人以上が申し込んだそうだ。前年の700人を大幅に上回り、フルタイムの共働き家族という満点(入園のための点数制度)に近い家庭が、どこの認可園にも入れないという事態が区内あちこちで起きていた。

やっとつかんだ入園のチャンスだったが…

 二次募集に応募したときに応対した、区役所窓口の“冷徹女性”が「認可外のA園かB園なら空いてるかもしれない」と口にした。既に他の認可外には断られていた私は、帰宅してすぐに電話。B園は満杯だったが、A園にはまだ空きがあり「日曜日に行う説明会に来ていただければ、そのまま入園手続きもできます」との答え。

 このとき、既に3月も後半に突入していた。

 二次募集は無理だと分かっていたので、わらをもつかむ気持ちで「お願いします」と即答。ネットで調べると、関東に10園以上展開するチェーンのようで、明るい写真と、「保育士は全員正社員」「愛情を持って育てます」といった園の運営に関する言葉が書かれており、ほっと一安心。夫とも「とにかく認可に入れるまで、ここに入れよう」と話し、上司にも連絡を入れた。

 説明会では、保育士と運営会社のスーツの男性が現れた。週末だったため園児の様子は見ることができず、かわいいイラストの切り絵が貼ってある保育室を見学し、入園約束金2万円を払って終了した。部屋はマンションの1階にある30畳程度の1部屋。毎日散歩に行き、0~2歳中心。保育士は0歳児クラスでは園児2人につき1人、1歳児クラスでは園児3人につき1人、2歳児クラスでは6人につき1人が配置されると聞き、安心した。

 昼食は給食センターからの配達で、コンビニ弁当のようなメニュー(揚げ物あり)がプラスチック容器に詰められているものだったため、まだ1歳になったばかりの息子には手製のお弁当を持たせることに決めた。職場復帰と同時に始まる弁当作りは不安だったが、離乳食も完全に終わってないうちから揚げ物を食べさせるよりはいいかと決意。復帰は間近に迫っていたが、やっと安心でき、登園バッグやお弁当袋を縫うなど、少しでも息子に何かしてあげたいという気持ちだった。

 そして4月。A園に通い始めて10日目に、連載冒頭の恐怖のシーンを目撃した。

 入園説明会での内容はほぼ嘘だった。