結果的には、顧客管理に関するルーティンワークを専属アシスタントに任せることで、私は顧客の新規開拓や深耕に集中でき、アシスタント1人の人件費を余裕でカバーできるほどの売り上げ拡大につながりました。この成果が会社に認められ、後にこの体制は全社へ広がりました。

 昨今、多くの企業がダイバーシティーの施策に取り組んでいますが、まだ手さぐりの状態。そんな今だからこそ、「トライアル」としての提案は受け入れられやすいと思います。ワーママ活用歴が浅い会社であれば、むしろチャンスだと捉えてください。「うちの会社は制度や環境が整っていない」と嘆くのではなく、「私たちワーママは、会社がこんなサポートをしてくれれば働きやすくなり、パフォーマンスを向上させられます!」という提案を自分から出してみてはいかがでしょうか。

 なお、仕事がしやすい体制・環境整備を会社に要望する際には、一方的に「こうしてほしい」と訴えるだけではなく、それによって「どんなパフォーマンスを上げられるか」「会社にどう貢献できるか」までを示すことが大切です。私もこの要望を出した際には「生産性を2倍に上げてみせます」と宣言しました。具体的な成果目標をプレゼンテーションすることで、交渉成功率は高まるはずです。

社内で「仲間」を集め、「みんなの声」として会社に伝える

 新たな制度や仕組み作りを会社に提案するのは、会社の規模が大きくなるほどハードルが高いと言えます。そんなときは数の力を利用すればいいのです。社内で自分と同じ課題を抱えている人たちを探し、共同で会社に提言するという手もあります。

 私は長男を出産して職場に復帰した頃、育児と仕事のバランスの取り方に悩みました。当時は、ワーママをサポートする体制がまだ不十分だったのです。そこで私は、自らアンケートシートを作成し、社内のワーママや妊娠中の女性たちに協力を呼びかけました。

 会社の現制度に対する感想や意見、長く働き続けるために会社にどんなサポートを望むかといった声を集め、リポートをまとめて経営サイドに提出。その取り組みが認められ、ワーママが働きやすい制度や環境を検討するプロジェクトが発足しました。社内から有志メンバーを募り、新たな制度案を練り上げて会社に提案し、そのうちのいくつかを実現させることができました。自分一人では届かなくても、多人数が集まって声を上げれば、会社を動かす力になります。