「使う」のではなく「つき合う」感覚

 ルンバを試用したのは約1カ月。使い始めた時点では「本当に掃除できているのか」と妻はルンバに懐疑的だった。

 だが、使い続けた後の感想は「たしかに床の埃はなくなった」。ソファの下やベッドの下など、人間が掃除しづらいところもカバーしてくれるので、ルンバが入らないところを重点的に掃除すればよくなった。

 家電コーディネーターの戸井田園子さんも「ロボット掃除機と人間の棲み分けが必要」とアドバイスする。ロボット掃除機には家の中で一番面積が大きく、掃除の頻度が最も高い床を任せる。「床掃除をアウトソーシングできるだけで負担は大きく変わる」。特に小さな子どもがいて、床の埃を小まめに掃除したいが時間がない、という家庭にとって効果は大きいだろう。

 もちろんロボット掃除機は棚の上や壁は掃除できない。そこは人間が掃除する必要がある。「それでも掃除全体の7割くらいはロボット掃除機がカバーしてくれる」と戸井田さん。残り3割を自分ですればいいと考えれば、ずいぶん負担は減る。「完ぺきを求めず、弱点を見つけて、受け入れてあげる。ロボット掃除機を使うときは“共存する”という意識が大切なんです」。

 従来の掃除機は「使う」ものだが、実際に使ってみたロボット掃除機は、「いかにつき合うか」という、人間同士に近い感覚が求められる気がした。妻にしてみれば「掃除をしない旦那よりはずっと役に立つパートナー」といったところか。

高級モデルは「掃除力」と「行動力」の2つが揃う

 最後に製品選びについて。最初にも書いたが、現在、掃除機売り場には、1万円から5万円を超えるものまで、さまざまなロボット掃除機が並ぶ。最初の1台はどう選べばいいのか。

 戸井田さんによると「現時点では、高いものを買っておいたほうが安心」。

 ロボット掃除機に求められる機能は「掃除力」と「行動力」。安価なモデルは、この2つのうち、特に「行動力」が見劣りするという。「パターン化された動きしかしないので、廊下や倉庫など、家具や障害物のない場所をするなら安価なモデルでもいいが、掃除をアウトソーシングするつもりなら高価なモデルを買ったほうがいい」。

 「ロボット掃除機をメインとして考えるなら、5〜6万円の予算を用意したい」というのは、ビックカメラ有楽町店の片山康之さん。毎日、ロボット掃除機を動かし、ロボットでは掃除できないところを、週末に別の掃除機を使って自分で掃除するという使い方だ。この予算があれば各社の高性能なロボット掃除機が選択肢に入る。一方、低価格のロボット掃除機はあくまでもサブ。「自分でも3日に一度くらい掃除をして、できない日をロボット掃除機で補う使い方に向いている」とアドバイスする。

ロボット掃除機が得意な床掃除を任せ、できないところだけ人間が掃除するという「共存する」意識が重要
ロボット掃除機が得意な床掃除を任せ、できないところだけ人間が掃除するという「共存する」意識が重要

(取材・文/日経DUAL編集部 大谷真幸)

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