渥美 確かに。でも共働きだからこそ、旦那さんはキャリアチェンジができたわけですよね。キャリアを蓄えるために学生になって勉強する期間が持てて、国家資格にも合格できた。これからは、一つの会社に就社して勤め上げることのできる人はごく一部になるでしょう。転職するのが当たり前、ときには充電期をつくってキャリアチェンジをする。そんなキャリア形成が必要になっていきます。共働きでいることは、お互いにとっての保険になる。実際に、僕も長時間労働がホトホト嫌になって会社を辞めてしまい、妻に養ってもらった時期がありました。本当にありがたかったです。

羽生 共働きをすることによって、夫婦でキャリアチェンジできるのは、このご時世で大きなメリットですよね。けれどその一方で、男性が「妻に食わせてもらっている」となったときのストレスって、やっぱり大きいんじゃないかとも思いました。

 夫も当初は「国家資格を取ってやるぞ!」と猛々しかったのですが、2年間育児担当をするうちにどんどんオス度が下がっていきました。朝起きて掃除をし、子どもを保育園に送ったあと、昼間にスーパーに買い物に行っていたのですが、「近所の奥さんたちに見られないように」とかなり気を遣っていたようです。

渥美 なるほど。

羽生 保育園でも「羽生さんちのパパは、襟なしの服を着ていることが最近多いよね」と噂になったこともありました。私も気にして、夫に襟付きのポロシャツをユニクロで3枚買ってプレゼントしましたよ! 夫は31歳で会社を辞めて、35歳で国家資格を取得して再就職したのですが、4年間背負い続けた「無収入」の3文字は、きっと鉛よりも重かっただろうなと。同窓会はすべて断り、SNSも一切やりませんでしたから。同級生たちの活躍している様子を見ても、自分がつらくなるだけだとわかっていたからだと、今になっては思います。

 その点、女性はワーキングマザーになるのもよし、専業主婦になるのもよし……と生き方にいろいろな選択肢がある。それに比べると男性はまだまだ画一的な価値観に縛られる面が強くて、イクメンって大変なんだな~って思いましたね。

「片働き」男性上司には理解できない共働き男性部下

羽生 育休の取得についても、男性のほうが大変です。渥美さんは育休を2回取得してますよね。周囲の理解を得るのは難しかったのではないですか?

渥美 僕が1回目の育休を取ったのは7年前ですが、当時の上司から「お前、男のくせに育休を取るなんて、自分のキャリアをダメにするぞ」と言われました。昇進・昇格が大幅に遅れるぞという意味です。「男が育休なんて、論外だ」と全く理解しようとしてくれませんでした。上司は親心で言ってくれたのだと思うけれど、当時は「なんて分からずやの上司なんだ」としか思えませんでしたね。