夫婦がともに働き、子育てするのが当たり前の社会になって、私たちの働き方や組織はどう変わるのか。ワーク・ライフ・バランス研究の第一人者で、東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長の渥美由喜さんが解説します。連載のオープニングでは渥美さんと日経DUAL編集長羽生祥子が、自身の体験を踏まえた仕事と育児、企業や社会、イクメン現象などについて語りました。

渥美 こんなデータがあるんです。厚生労働省の調査によると約3割の男性が「育児休業を取得したい」と希望しているといいます。また、2011年に日本生産性本部が実施したアンケートによると、新入社員の男性のうち7割超が「子どもが生まれたら育児休業を取得したい」と答えています。

羽生 7割も!? 頼もしいですね。子育ての時期ってそんなに長いわけじゃない。限られた期間だからこそ、家事や育児に積極的に関わりたい。そんな男性は確実に増えています。実際に保育園でも、パリッとしたスーツを着たパパの姿をよく見かけます。子どものおむつを準備しながら、携帯電話を耳に挟んで「あの会議の件ですけど」と言っているパパの姿って、かっこいいですよね。

イクメン男性に関する「衝撃」の調査結果

渥美 そう言ってもらえるとうれしいですね。でもね、イクメンは睾丸が小さいという調査結果もアメリカでは出ているんです。睾丸(こうがん)の大きさと育児への関心度合いは反比例していて、睾丸が小さいほどイクメン度が高いそうなんです。

羽生 ええっ? どういうことですか?

渥美 テストステロン(男性ホルモン)量が減少すると性欲が低下する反面、子育てへの関心は高まるらしいんですね。もともとテストステロン量が少ないからイクメンになったのか、育児を積極的にしている間は分泌量が少なくなるのか、どちらなのかは分かりませんが。

「仕事も、子どもも、愛している」と言える男はモテます!

羽生 だけど今の時代は確実に、育児する男性のほうがモテますよ。かっこいいですもん。ただ、今のイクメン男性たちが置かれている状況って複雑だなと感じます。これまでの価値観では、筋肉隆々でバリバリと稼ぐ「俺が一家の大黒柱」という男性がよいとされてきましたよね。そのため、イクメンのようなやわらかな思考の持ち主であっても、旧来型の価値観にまだ縛られているところがあるような気がするんですね。

 実は我が家では、4年間、家庭内で「性的役割転換」が行われたんです。夫が突然「国家資格を取りたい」と言って会社を辞め、大学院生兼子育て担当になったんです。そのとき長女が1歳半。突然のことに、びっくりしましたよ。でも夫は決めてしまったようだし、私は心の中で引きつりながらも「頑張ってね!」と答え、数百万円の学費を家計の中から渡しました。

渥美 それは、いい奥さんですね。

羽生 ん~、「世帯収入が下がるからやめて」とは言えませんでしたね。それからは夫が育児担当、私が就労収入担当になりました。長女が3歳のときにもらった母の日のカードには「いつも頑張って働いてきてくれてありがとう。これからもたくさん稼いでね。倒れないでね」と書いてあったんです。それを読みながら、「あれ? これって、私が子どもの頃に父の日に書いたメッセージと同じでは?」と(笑)。