戦いは卓上カレンダーで始まった!
かくして、スケジュールのやり繰りに“わが家のルール”を決めることとなった。
2人の仕事が重なったときにどうするか。「ギャラの高い方」と夫は言うものの、なかなかそうも割り切れない。単発のイベントなどの仕事の場合は、1日いくらでギャラが出るが、継続した仕事だったり取材だったりすると、1日の対価はすぐには計算できない。
異論なく決まったのは、まずレギュラーの仕事を優先すること。イレギュラーの仕事は早く決まった順。そのほか、夫にありがちな「打ち合わせと称した飲み会」や最近になって熱心に通い始めた英会話教室、私が狙っている骨盤矯正マッサージや友達とのランチなどは、空いている日があれば入れてもよい。既に先にスケジュールを入れた日に、急きょ仕事のオファーがあったり取材に行かなければならなくなったりした際には、その都度交渉するということで落ち着いた。
要するに、「早いもん勝ち」だ。リビングに置いてある小さな卓上カレンダーがその戦場となった。夫の予定は黒、私の予定は青、息子の健診などの予定は赤で記入する。まずは、1年分のレギュラーものから。夫の分は、スーパーバイザーを務めるJFL(日本フットボールリーグ)のチーム「FC琉球」の試合や、解説を頼まれているワールドカップ予選などの日程を記入し、私は、4月から隔週金曜日に出演している「朝ズバッ!」(TBSテレビ)を記入する。
その他のナレーションや対談、イベントなどの仕事はだいたい1カ月前くらいに決まることが多い。もう記入済みの夫の予定とかぶることは許されないので、卓上カレンダーに加え、私の手帳に夫の予定まで書き込む羽目に。それを見ながらマネジャーに仕事の調整をしてもらうという、なんとも面倒なことになっている。マネジャーも、「なんか、私、お2人のスケジュール管理してる秘書みたいですね(汗)」とこぼしている。
何食わぬ顔をして、さりげなく骨盤矯正マッサージの日程を入れるのも忘れてはならない。これだって、大切なお仕事だもんね。「13~15時」とだけ書いておけば、仕事と区別がつかないはず。しめしめ。
仕事に行くときと変わらぬ様子で出かけ、最後まで何をしてきたか悟られていないときもあれば、「これ何?」と聞かれ、マッサージと言わざるを得なくなり、二重線を引かれて、夫の仕事に書き換えられるときもある。しまった、ばれたか。
卓上カレンダーに書きそびれて、大事な一日を夫に取られたこともある。歯医者の予約をしていたのに、夫の英会話教室に負けた。く~! 絶対今度は書き漏れのないようにするぞ~。
保険会社からもらった卓上カレンダーは、黒と青のせめぎ合いで日に日にボロボロになっていく。クマだかタヌキだかのイラストも「そりゃないよ」と嘆いているような気もするが、おかげでスケジュールの擦り合わせはなんとかうまくいっている。自由に仕事をする権利、自由に出かける権利を勝ち取ったことで、子育てに伴うイライラやストレスもかなり軽減された。仕事を終えて帰ってきたとき、子どもが満面の笑みで迎えてくれる幸せも新たに加わった。
夫「この日、取材入れてもいいかな? ちょっとカレンダー見て」
妻「大丈夫だよ。どうぞどうぞ行ってらっしゃい」
いや~、なんて平穏な会話なんだ。これで家庭内の温かい雰囲気が保てるというもの。
でも、まれに、
夫「明日1日中、英会話入れちゃった」
妻「え~? そんなに家にいないの。困るぅ。原稿書こうと思ったのに」
と、とげとげしい会話になることもある。
ギャラの話よりはちょっとマイルドになったものの、赤ちゃんの前でとげとげしいのもマズイでしょ。2人で働いて2人で子育てには、スケジュール管理の他にも、もっともっとルール作りが必要なのだった。