PTA向けの校長講話では、「家庭学習」より「自立学習」を強調して語った。放課後の学童保育や、学校での居残りで宿題をやる子も多い。「家で親がやらせて当たり前」から、発想を変えないと対応できない部分もある。事情を思いやった上で、あえて家庭にお願いもする。

 1日5分でも10分でも、勉強を見る時間を作ってほしい。勉強は教えなくていい。家庭学習の時間を、家族にほめられるうれしい時間にすることで、机に向かう習慣が育っていく……言いながらいつも反省する。私は今週、娘を何回ほめただろう。

 「1年目の公募校長はうまくいってんの?」の答えは、分からない。「民間人校長」とまとめられても困ってしまう。一人ひとりは違うし、配属された学校の課題も違う。これができたから合格、という指標もない。

 ただ1つ、これだけは確かだ。

 子どもたちにとって、校長が民間出身かどうかなんて関係ない。学校をうろついて、子どもの変化にアンテナをとがらせていると、やんちゃな子のいるクラスから声が飛ぶ。

 「校長先生、絶好チョー!」

 日本中の小学校で校長先生がかけられているであろうかけ声に励まされ、今日も廊下のゴミを拾い、トイレのスリッパを並べる。

 マネジメントだの戦略だのという言葉以前に、「先生の模範」としてふるまえる人。実は、公募校長にとってこれが一番の条件であり、難問ではないかと思っている。