学力向上策に手をつける前に、睡眠不足で眠そうな子が多ければ、生活習慣の見直しから始めなければならない。子ども同士のトラブルが多ければ、「自分も相手も尊重する気持ち」を育てる必要がある。合間には行事が多い。今はプール開きの準備や夏の宿泊行事に向けて教職員は動いている。

「学校にあるものリスト」を生かす

 それに、「やりたかったこと」の多くは、すでに現場で行われている。たとえば「知っている職業の数を増やす」キャリア教育は、私の目標の1つだ。

 先日、2年生の「町探検」に一緒に出かけた。学校のすぐそばには、大阪木津卸売市場がある。生きたハモに「あれはヘビ!?」と興奮し、昔ながらの乾物屋を珍しそうに眺める。行きなれたスーパーで「季節のものを入り口近くに置く」「レジ近くに『ついで買い』を誘うものを置く」と聞いた子どもたちは、視点が1つ増える。

 バックヤードに入れてもらい、肉の塊をスライスする機械や揚げ物をするスタッフを見る。今まで、親に連れられてきたスーパーが「仕事の現場」に見えてくる。いい社会見学だった。

 学校には、多すぎるほどの取り組みがすでにある。

 「0から作りあげる」にこだわるより、「すでにあるもの」の効果を上げる方がずっと楽だ。「変えてやろう」と鼻息荒く乗り込んでも、空回りする可能性は高い。どの学校にも最優先課題は、必ずある。その解決を教職員と力を合わせてやって、ようやく次のステップが見えてくる。

 私は日々の行事を体験しながら、「自分がやりたかったことリスト」と「学校にすでにあるものリスト」のすり合わせをしている。形骸化しているもの、成果が思うように出ていないものは再検討リストに入れる。いいものは、より磨きをかけていく。どんどん発信する。学校には、一般には知られていない努力や知恵が詰まっている。

 理想に焦って、子どもや教職員をつぶしては話にならない。現実を、徐々に理想に近づけていけばいい。

単なるリーダーではなく校長「先生」

 宿題の出し方についてのミーティングに参加していると、わくわくしてくる。「経済格差を教育格差にしない」ための入り口に、やっとたどりつけた。今なら保護者視点で若い教師にアドバイスもできる。