でも、今は夫に多くのことを望めない。校長に着任して2週間も経たないうちに、義母が脳梗塞で倒れた。我が家は、育児に加えて介護問題にも直面している。私は「家事・育児と仕事に介護をやってのけるスーパーウーマン」では決してない。「家事・育児はできる範囲で精いっぱい」ぐらいだ。

 夫も家事育児が完璧の「主夫」ではない。同じく「家事・育児・介護はできる範囲で精いっぱい」が寄り合って暮らしている。

 働きたい女性を苦しめる「母性神話」と、若い男性を悩ませる「大黒柱プレッシャー」から解放されれば、家族は何とかやっていける。「ニコイチ(2人で1人)」で家計と家庭をやりくりして、乗り切るしかない。

 着任前に、夫に1つだけ約束してもらった。

 「私はこれから、たくさんの子どもの命を預かる仕事になる。家のことは、目が行き届かなくなるかもしれない。子ども2人の健康と安全には、あなたが責任を持ってほしい」

 そう言った手前、細かい家事は二の次だ。洗濯物の山に埋もれて笑っている息子を掘り出し、抱きしめる。

 ようやく毛が生えそろったふわふわの頭の、においを嗅ぐ。

 君が小学生になる頃、日本の公教育はどう変わっているだろう?

 公募校長の任期は3年、延長有りで5年。

 リアル子育て世代だから、親の悩みや子どもを取り巻く家庭環境が分かる。iPadをすっすと操作する娘の指先に、IT教育の未来が見える。現場に入れば、教職員の多忙さが見える。保護者の想いとのバランスを、どう取っていくか。PTA役員のしんどさも、保育園の保護者会で感じている。もっとうまいやり方はないか。自分のこととして考えられる。

 「乳幼児を抱えて校長なんて大変ね」、ではなく「よかったね」と言われたい。

 今の私は、家族に支えられて「両手でライフワーク」を満喫している。