このコラムでは、育児・教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が「忙しいビジネスマンに役立つ育児術」をアドバイスしていきます。

 「育児をしたいという気持ちはあるのだけど、いかんせん仕事が忙しくてどうにもならない」という父親は多いですよね。でも共働き夫婦の場合、仕事をしているのは、妻も同じ。仕事を言い訳にはできません。

 そこでよくあるのが、「だから仕事の時間を効率化して、少しでも早く帰ろう!」という発想です。

 一見立派な所信表明です。でもちょっと待ってください。家族との時間を大事にするために、なんでまた仕事に意識を向けてしまうのでしょうか。それこそが仕事優先の潜在意識の表れではないかと思います。

 もっと言えば、気合を入れて頑張ることで仕事量はそのままでも残業を減らすことができるとしたら、それって「今までちょっとサボってました」と自ら証明することになる皮肉な意味も含んでいるのではないでしょうか。

 そもそも、仕事を効率化すれば家族時間が捻出できるというのは危険な幻想です。

 最近まで続いてきた不景気で社員は減らされ、一人あたりの業務時間は増えています。ITの進歩で業務のシステム化は進み、仕事は極限まで効率化しているはずです。

 人より効率良く業務をこなしても、余裕がありそうに見えると仕事がさらに集中する皮肉な構図も、至るところに見られるのではないでしょうか。

 そのような厳しい状況でさらに仕事の効率化を行うことは、絞り切った雑巾を万力にかけて、最後の一滴をさらに絞り出そうとする行為です。そんなことをしたら雑巾が破けて使えなくなってしまいます。

 そのような方法で時間の絶対量をふやそうとしてしまうと、常に「限界への挑戦」のようになってしまいます。それでは長続きしません。

 「妻も仕事をしているのに、妻にばかり負担をかけてしまって申し訳ないな」と感じている、忙しい父親が目指すべきは、常に限界に挑戦するような「サバイバル育児」ではなく、無理をしなくても持続可能な「サステナブル育児」なのです。

育児参加は時間の絶対量より質

 歯を食いしばって常にぎりぎりの状態で仕事と家庭を両立しようとしても、それほど良いことはありません。