通常、1年間の贈与額が110万円を超えると贈与税がかかります(受け取る側がもらった額で計算。2人から100万円ずつ貰うと贈与税はかかる)。これは「暦年課税」と言って通常の贈与です。現在これとは別に、生前贈与で特に優遇される仕組みが住宅資金と教育資金であります。これらの制度では税金を減らしつつ、早い段階で資産を受け取ることも可能です。

 教育資金については「教育資金贈与信託」といって、2013年から始まったばかりの仕組みです。これは子供1人当たり1500万円を上限に祖父母等から非課税で贈与を受けられる制度で(学校以外の教育資金にあてる場合は500万円)、利用するには信託銀行や銀行を間に必ず挟まないといけません。

 祖父母は信託銀行にお金を払い込み、両親がそのお金を使えるのは教育資金に支出した時だけです。引き出し時には教育費にお金を使った証拠として領収証等を提出しないといけません。

 対象となる資金は、保育所、認定こども園、学校に支払う費用等です。学校外でも500万円までは塾や習い事にも使えます。

 ちょっと面倒な仕組みに思えますが、祖父母がある程度の資産をお持ちの場合は検討してみてはどうでしょうか。上限いっぱいまでもらえた場合、大学まで国公立を利用する進学コースでは使い切れないほどの額になります。制度の期限は2015年末です(詳細は制度を利用できる信託銀行等でご確認下さい)。

親と祖父母、両方が安心できる「教育資金の確保」

 ここで「アレ?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。「祖父母から教育資金を出してもらうだけで贈与税ってかかるの?」と。そう、実はかからないのです。日常的な生活費や教育資金に使う目的で受け取った場合については、年間110万円以上の援助を受けても非課税です。

 ではこの仕組みのメリットは一体どこにあるのでしょうか。それは子供の教育資金をまとめて確保できることです。上限までもらえるような方は少数派かと思いますが、数百万円の資金をまとめて確保できれば将来の計画も立てやすいでしょう。

 祖父母が「孫の大学費用ぐらいは出してあげるから」と約束していても、親としては10年以上先の話をどこまであてにして良いのか分からない、という不安もあるでしょう。資金確保のリスクを減らせるのがこの仕組みのメリットです。

 祖父母の側も、孫の教育費のためにお金をあげたのに親が海外旅行や無駄な買い物で散財してしまう……といった心配がないので安心できます。

 制度を活用する注意点として、使いきれずに余ったお金には贈与税がかかることです。あとはお金以外の要素として、多額の教育資金を出してもらうと子育てに口出しをされる可能性が高まったり、老後の世話も期待されたり、といった事があるかもしれない点です。

 自分の親が出してくれる場合は気楽だけども、口出しされる可能性を考えて、相手の親から出してもらうのは歓迎しないという方もいらっしゃるでしょうし、子供の事は夫婦だけで決めたいから多額の資金をもらいたくない、という方もいらっしゃるでしょう。

 お金以外の問題については「こればっかりは夫婦と親子で話し合って解決して下さい」としかアドバイスできませんが、制度自体は良い仕組みです。ぜひ夫婦間、親子間で話し合って活用してほしいと思います。