仕事が忙しくて自宅学習を見てあげる時間がとれないという問題もある。その場合の対策の1つは面倒見のいい塾を見つけること。次に、子どもが自分である程度できるような自主性を育んでおくことだ。「お母さんが家でプリントの答え合わせを毎回必ずできなくてもいいんです。最近では共働き世帯が増えているし、塾間の競争が激しいこともあって最近はどの塾も『お客様』として対応してくれます。子どもの勉強のことはどんどん塾に相談し、塾を“使い倒す”ぐらいの気持ちでいましょう」と杉山さんは語る。

 共働き世帯の受験で大きなハンディとなるのは出願や当日の付き添い、合格発表、入学手続きなど、平日に学校まで足を運ばなければならないことが集中するときだ。 首都圏では例年、1月10日から埼玉、20日から千葉、2月1日から東京・神奈川で中学入試がスタートする。東京の受験生の場合、2月の東京・神奈川の入試前に千葉・埼玉で「お試し受験」をするケースが多い。すると入試当日の付き添いに発表、入学手続きなどで、4~6日間程度休みを取ることが必要になる。

 入試に面接がない学校ならば、試験そのものは午前中で終わるため、午後には仕事ができる日もあるが、何が起こるのが分からないのが中学入試。「この期間は仕事ができたらもうけもの」くらいの意識でいたほうがいい。

入試当日の付き添いに有休は不可欠、職場への根回しは早めに

 息子を中学受験させた神奈川県の50代女性は「2月1日だけで受験が終わる人はごくわずかで、多くの人が4日くらいまで受験し、発表や手続きで2月10日前後まではバタバタになりました」と当時を振り返る。早い時期から夫と話をし、2月1~5日はなるべく休めるよう仕事のやりくりや根回しをしておいてほしいと伝え、夫婦で調整したという。夫婦どちらか一方が全部休んで対応することは不可能なので、夫婦とも事前に、職場への連絡と調整は欠かせない。

 吉本さん、杉山さんが共働き世帯で必須としたのは、夫婦間での役割分担だ。「お父さんは細かいことに口を挟まず、子どもの学習状況や志望校が適切なのか、などを把握して見極めてほしい。そして必要なときにはしっかり褒めてあげます。細かい指示を出すのは、言語が豊富なお母さんの役割です。お母さんの役割が2人いる、といったことになりがちなので注意しましょう」(吉本さん)。「最近では受験にのめり込みすぎるお父さんが増えています。お父さんは特に理系分野の勉強をみてあげ、熱くなりすぎないようにお母さんが見守るといったことも必要です」(杉山さん)

 そして受験校選び。私学は校風もさまざまなので、子どもに合っているか、親も無理なく通わせられるかを冷静に考えよう。「たとえば、同じくらいの偏差値で同じ女子校だったとしても雰囲気は学校によってまったく異なります。学校に足を運び、比較します。学校見学はいきなり難関校に行くのではなく、実力より少し下の学校から順番に見てください」(吉本さん)。「学校によっては行事が多く、親が平日に呼び出されることもあるので行事などもチェックしておきましょう」と杉山さんはアドバイスする。

 夫婦で志望校を決定し、日ごろからすり合わせておくことも忘れないようにしたい。さもなければ、直前で「こんな学校に行かせるなら受験はやめる」といったことを父親が言い出し、受験自体をぶち壊してしまう……ということもありえる。そして、必ず合格するような学校を一校は受けさせること。「たとえ入学しないとしても、合格したことでこれまでの頑張りをかたちにするのが大事。志望校に合格しなくてもそれまでの努力と頑張りを認め、心から喜んであげることでその後の高校、大学受験での頑張りにつながります」(杉山さん)。