とはいえ、塾選びは親の都合で決めてはならない。杉山さんは、「親が一生懸命になりすぎて周りの情報に流されてしまい、よかれと思った塾に無理に行かせてしまうことで親子関係が悪くなってしまうことがあります。そうなると受験はうまくいきません。無理をさせず、口コミで近所の評判のいい塾を見つけて通わせれば進学実績の高い中堅校には入れます」と力を込める。吉本さんは「お弁当を持参しなくていいなど、手間がかからないところを探すのではなく、あくまでも子どもの能力で判断すべきだ。四谷大塚や日能研の模試で偏差値が58前後より上の『上位校』を狙う場合は、情報量から考えても大手塾が断然有利です。ただし子どものタイプによっては向き、不向きがあります。大手の競争が激しいところに通わせるのが不安であれば、近所の個人指導塾に通わせながら、定期的に大手塾の模試を受けるという手もあります」と話す。
わが子が集団のなかでの競争で力を発揮するタイプなのか、マイペースにコツコツ積み上げていくのが得意なタイプなのかをよく見極めたうえで決めてほしい。塾は入会しても途中で変えられる。急に行きたがらなくなったり、成績が下がったりしたときなどは子どもに話を聞きつつ、必要であれば別の塾に転校させることも考えよう。
「手作り塾弁」へのこだわりは捨てる
大手塾では、5年生、6年生になると塾の授業が終わる時間が、21時前後になる。授業終了後に自習室で勉強したり、先生に質問したりしていると22時近くになってしまうこともある。
共働き世帯にとって、子どもの塾通いでネックとなるのは送迎の問題だ。何かのときには同じ塾に通っている近所のお母さんにお迎えをお願いするなど、いざというときに頼れる人間関係を作っておくといい。送迎ができないのであれば、駅または自宅から近く、小学生が夜1人で歩いても大丈夫かどうかを確認したうえで塾を選ぼう。
また、塾での夕食も共働き夫婦にとっては悩みの種だ。頑張っているわが子にお弁当を作ってあげたいという気持ちは分かるが、どこかで割り切ることも必要だ。
この春、息子を東京の共学校に入学させた母親は、「出勤前に作って冷蔵庫に入れておいたパンやおにぎりを持たせたり、コンビニで買わせたりすることが多く、心苦しい思いをしていました。あるとき息子にちゃんとしたお弁当作ってあげられなくてごめんね、と言ったら、『塾では10分程度しか夕食の時間がないから、おにぎりとかサンドイッチ、コンビニの肉まんのほうが楽でいいよ。○○ちゃんは毎回お弁当残しちゃってる』と言ってくれました。本音は分かりませんが、これを聞いて少し気が楽になりました」と言う。