契約社員、正社員の別なく“人”を見ていないと活躍を導けない
インターネット広告事業、インターネット上のプロモーション全般の支援を行うセプテーニで働く井上祥子さんは、現在37歳、小学校1年生の子どもを育てるワーママだ。同じ会社で働く夫とは「週2お迎え制度」を取り、対等な立場で仕事を続けている。
セプテーニは現在グループ全体で1159人(2016年9月末時点)の社員を抱え、女性比率は約3分の1ほど。井上さんたちを皮切りに育児休業後に復帰する社員が増加中だという。
「イクボスアワード2016特別奨励賞」を受賞。現在は新規部署でチームで仕事をする井上さんだが、多いときで16人のチームのリーダーとして部署を取り仕切ってきた。「自分がイクボスなんて」という低姿勢ながら、周りからの信頼は厚く、業務で関わりのない社員にもよく知られた存在だ。
31歳/育休明け3カ月後にフルタイム勤務、その3カ月後にリーダーに
井上さんはセプテーニに28歳で中途入社。現在でも平均年齢29歳という若い会社だけに、当時は育休・産休を経て職場復帰する社員はまだあまりいなかった。そんな中、2010年に出産。2011年に復帰すると、3カ月後にはフルタイム勤務を再開、さらにその3カ月後には女性5人、男性1人のアドオペレーションチームを任される。初めてのリーダー職だ。
「フルタイム勤務に戻っていたとはいえ、定時が9:30~18:30なのに対し、保育園は20:00までなため、残業はほとんどできない状態でした。一方で、リーダーになった当初は残業する社員もまだ多かった時代。時間的制約がある自分にリーダーが務まるかの心配はありました」と井上さん。
当時はワーママ自体、井上さんを含めて数人という状態だった。相談したくても同じような立場の先輩はいない。その中で派遣社員と正社員からなるチームを取りまとめることになる。まず、改善に着手したのが業務時間の圧縮だ。
「当初、それぞれが何の業務にどれくらいの時間がかかっているのか分からなかったんです。所属するアドオペレーションチームは、自部署のルーティンの業務と、コンサルタント部からから依頼を受けて行う仕事があり、コンサルタント部からの仕事を各メンバーに割り振るのも私の仕事になりました。でも、実際にこの人ならこれくらいの仕事は1時間でできるだろうと判断して割り振った仕事に3時間を要したりしていました。その結果、業務のフォローに当たることも多かったんですね」
チームリーダーとしての第一歩はまさに手探り。折しもセプテーニでは2011年4月に女性の働き方や育児支援、ワークライフバランスに取り組む部署横断型プロジェクト「hug-kumi(はぐくみ) 委員会」が発足したばかり。ワークライフバランスの向上、女性の働き方の向上のための制度が形作られていく時期と一致していたこともあり、チームメンバーの責任は自分が取るという気持ちもあった。
「本来は、リーダーになるための勉強をする必要があったと思います。でも余裕がなく、気が付かないうちに派遣社員の方のフォローが足りなかったためか離職が続いた時期がありました」
いくら部署のメンバーが追いつかない業務をフォローしても、そのメンバーが本来どんな業務をしたいのか、どんな働き方をしたいのか、対話を繰り返し、人を見ることができていなければ、「その人が活躍するための道を探ることはできない」と井上さんは振り返る。