統計データを使って、子育てや教育にまつわる「DUALな疑問」に答える本連載。今回はいつも子どもたちがお世話になっている「教員」についてです。専門職のイメージが高い教員ですが、日本の教員は待遇面や勤務時間において、どのような状況なのでしょうか。舞田敏彦さんが分析します。

薄給で過去は不人気、「デモシカ教師」と言われたことも

 こんにちは。教育社会学者の舞田敏彦です。今回は、学校の先生のお話です。学齢のお子さんがおられる読者が多いと思いますが、「わが子を託している『教師』とは、どういう職業なんだろう?」。こういうギモンを持ったことはないですか。

 歴史を振り返ると、明治や大正の時代では、教員は不人気の職業でした。お給料が激安だったからです。それはもう贅沢ができないというレベルではなく、生存が脅かされるほどでした。大正期の新聞を見ると、「哀れな教員」「先生の弁当はパン半斤」「栄養不良による教員の結核」といった記事がわんさと出てきます。

 職業を訊かれて「教師」と答えると憐みの眼差しを向けられ、果ては教員になるのを強いられた青年が自殺する事件まで起きていました(東京朝日新聞、1922年6月28日)。

 戦後初期の頃も、本業だけでは食えないので、教え子や同僚に見つからないかとビクビクしながら靴磨きのバイトをする教員もいましたし、民間の給与が右肩上がりに増えていた高度経済成長期には、「デモシカ教師」という言葉が流布したこともよく知られています。教師に「でも」なるか、教師に「しか」なれない、という意味の皮肉です。

待遇が改善され、今は人気職業の一つに

 これではいけないと、1974年に教育職員人材確保法という法律が制定されました。以降、教員給与は段階的に引き上げられ、現在に至っています。今では、教員の給与が民間に大きく水を開けられていることはありません。「デモシカ」どころか、教員は人気職業の一つです。しかるに、実態はデータを見てみないと分からないですねえ。最新のデータで、教員の給与を民間と比べてみましょう。