先日、日経BP社で小学校低学年のお子さんをお持ちの親を対象に、親野智可等さんのセミナーを実施しました。親野さんは、公立小学校で23年間、教師を務めた経験からメルマガ「『親力』で決まる子供の将来」を発行する教育評論家です。学習面を中心に小学校生活を充実したものにするために、親は子どもとどう接していくのがいいのかという、親子のコミュニケーションについてお話をお聞きしました。その内容をお伝えする本連載。5回目のテーマは「勉強のヤル気スイッチを入れる方法」です。

子どもは音楽の条件反射に弱い

親野智可等さん
親野智可等さん

 前回は、否定的な言葉で子どもを叱らないための、合理的工夫についてお話ししましたが、他にもまだありますのでご紹介します。

 それは「音楽活用」。音楽の条件反射を活用するというものです。

 あれは私が教師になって3年目のことでした。あるご家庭を訪問したとき、突如、音楽が流れ始めたんです。そうすると、その家の男の子がサッと机に向かって勉強を始めました。ビックリして「何ですか? これは?」と聞くと、決まった音楽が決まった時間に流れるようにセットしていて、その音楽が鳴り終わるまでに勉強を始めると決めているということでした。

 子どもは、意外と音楽による条件反射に弱いのです。実はこういったことは、学校でも昔から活用されています。昼休みになると、クラシック音楽の『剣の舞』などがかかります。あれだけにぎやかな曲がかかると、もう、子どもたちは外で元気に走り回りたくなります。

 これは、その曲のリズムによる影響もありますが、もう一つは、毎日同じ時刻に同じ曲を聞いて外で走り回っているという条件反射も働いているのです。

 逆に、下校時刻になると、寂しげな曲がかかります。例えば、『遠き山に日は落ちて』などが代表的ですが、ああいった曲が聞こえてくると、何となく帰りたくなるものです。ここでも、曲のリズムによる影響と同時に、毎日、同じ時刻に同じ曲を聞いて下校しているという条件反射が働いているのです。

 このように子どもには音楽の条件反射が効きますので、皆さんも実践していただきたいと思います。できれば、どんな曲にするのかを子どもに選ばせたほうがいいでしょう。勉強を開始するときに流す曲を決め、決めた時間に流れるようにセットする。そして、鳴り終わるまでに勉強を開始するようにする。開始したら、曲を止めます。