1970年代初めから先進的な医療機器によって日本の医療業界を支えてきた、米医療機器メーカー、クックメディカルの日本法人クックジャパン(東京都中野区)。設立は2004年。患者のQOL(Quality of Life:生活の質)という概念の普及に伴い、低侵襲治療の技術向上に期待が集まる昨今、市場ニーズをくみ取った製品開発に定評がある同社の成長は著しい。

 同時に、医療機器および医療機器業界、自社の理念などを教える「クック・セールス・アカデミー」を通じた人材採用や、短時間で生産性の高い働き方の模索など、働く環境の改善にも積極的だ。今春開催した「働き方革命フォーラム」では、有休を最も多く取得した社員を表彰する取り組みを紹介し、積極的な改革手法に注目が集まった。

 ドライなイメージの強い外資系企業でありながら、社員を家族の一員と捉え、長期的な視野で共に成長していこうとする姿勢も同社ならではだろう。同時に、誰か一人が突出するよりも、互いに高め合いながら皆で成果を出すチームワークのカルチャーを重んじていることも特長的だ。

 そうした会社の方針を事業部レベルに落とし込み、さらにチームに落とし込んでいったのが、ウロロジー事業部の中日本チームである。同事業部に所属する一人の女性社員の2度の育休を通じて見えてくる、多様性を受け入れる風土とメンバーシップについて聞いた。

<クックジャパン>

1963年に米国で設立されたクックメディカルの日本法人。社員約240人中、3~4名が常に育児休暇取得中。出産・育児をきっかけに退職した前例はなく、ワーキングマザー率も高い。

ホームオフィスをつなぐ電話でのコミュニケーション

クックジャパンのウロロジー事業部で勤務する摂津夏紀さん
クックジャパンのウロロジー事業部で勤務する摂津夏紀さん

 2度目の育休から今春復帰した摂津夏紀さんが所属するのは、ウロロジー事業部。ウロロジーは泌尿器科を指す医療用語であり、ウロロジー事業部は泌尿器科領域で使用する医療機器を製造・販売する事業部だ。摂津さんはこの事業部の中日本チームで、営業を担当している。

 摂津さんを含めて14名いる事業部メンバーの多くは、30代から40代前半。ちょうど出産や育児によってライフスタイルが変化し、悩みも多様化していく世代だ。加えて、メンバーの半分ほどが共働きの家庭であり、各家庭を取り巻く状況は日々異なると言っても過言ではない。チームのメンバーに助けを求めざるを得ない事態もままあるだろう。

 しかし、同社の営業職はホームオフィスが基本だ。メンバー同士が顔を合わせる機会はほとんどなく、何かあれば電話で連絡を取り合う。ともすればコミュニケーション不足に陥りそうだが、普段から頻繁に電話連絡を取り合うこの習慣が、「離れているけどつながっている」(摂津さん)という絶妙な距離感を育んでいるようだ。特にウロロジー事業部には、同社の創業時から在籍しているメンバーが7名おり、「しんどい時期を共に乗り切ってきた」という強い連帯感があとから加わったメンバーにも波及している。

 「一人抜きんでるより、周りと共に高め合ってこそ評価に値するというのが当社のスタイル。長女の育休から復帰した後、チーム制になってからは、よりチームワークを重んじるカルチャーが強まりました」(摂津さん)