子どもはパパやママの行動のまねをしたり、親に喜んでもらったりすることが大好き。洗濯や食事の準備などの日常の家事をじっと見ていて「私(僕)もやりたい!」と主張することもあるかもしれません。そんなとき、共働きの慌ただしい生活リズムの中で、「一人で(片付けたほうが効率がいいから)大丈夫」「(もっと大事な)遊びや勉強を優先していていいよ」などと、知らないうちに子どものやる気の芽を摘んでしまっていませんか?

キャリア形成の大切さや社会の厳しさを肌身で感じているDUALファミリーだからこそ、習い事や学業など将来に困らないスキルに注力しがちになりますが、子どもの成長の基礎となるのは、やはり日常の生活環境。今回取材した幼児教育、食育、ビジネスそれぞれの第一人者は、専門分野は異なりますが「お手伝いを通じた家庭教育が、自己肯定感と高い人間力を育む」と口をそろえます。お手伝いの効果を検証しつつ、家族の関わりをより豊かに、親子のコミュニケーションにも役立ててもらいたい、と日経DUALでは「お手伝いする子は脳と心が伸びる! 特集」を企画。

前回は、モンテッソーリ教育の第一人者 相良敦子さんに、乳幼児期から脳や心の発達に合わせて、お手伝いをすることの大切さを伺ってきました。しかし現実的には、子どもにお手伝いをしてもらおうと思っても、喜んで取り組む子もいれば、なかなか積極的にしたがらない子もいます。お手伝いが好きになる環境を整えるために、親は何ができるのでしょうか? 

【お手伝いする子は脳と心が伸びる! 特集】
第1回 相良敦子 モンテッソーリに学ぶ1歳からのお手伝い
第2回 3歳からは「二度目のチャンス」 知性を育むお仕事 ←今回はココ
第3回 1歳からの台所育児 6歳までの経験が脳を伸ばす
第4回 食の自立は生きる力そのもの 科学への興味の芽
第5回 子の就職力を高める 「ヒマ・貧乏・お手伝い」習慣

しつけもお手伝いも3~6歳が絶好のチャンス!

 「いくら近くで家事をして見せても、『見ない』『したがらない』という子も確かにいます。もしかしたら、これまで、親が先回りして何でもやってくれていた子はそうなりやすいかもしれません」と話す相良さん。だからといって、「お母さんがいけない」ということではなく、第一子は比較的親が関わり過ぎてしまう傾向にあるのだとか。

 「1~3歳に顕著な内なる欲求である秩序感が満たされることが、次の段階へとスムーズに進むうえで大切なこと。子育てがうまくいかなかった、関わりかたを失敗してしまったかもしれない、と悩んでいるお母さんは意外と多いものですが、1~3歳の『宝物期』に子どもと適切に関われなかったとしても、『二度目のチャンス』と呼ばれる大切な時期があります。二度目のチャンスは3~6歳を指し、知性や意思を働かせる精神的なエネルギーが燃えさかるのが発達段階の特徴。『きちんと正しく振る舞いたい』『良い状態の自分でいたい』という気持ちが子ども達の中で大きくなっていきます」

よく観察することで、子どもに合った「お仕事」は必ず見つかる

 この時期にうまく環境をつくってあげれば、お手伝いを通じて子どもは大きく成長する、とアドバイスする相良さん。大事なのは観察眼。これまでお手伝いにあまり興味がなかった子どもでも、大人の適切な援助やお手伝いの内容によって、自分の好みに合った「お仕事」が見つかるはずです。

【家庭で取り組める「お仕事」の例】
<掃除>
・雑巾を絞って雑巾で拭く
・ほうきで掃いてゴミを集める
・ゴミ袋の口を結び、捨てに行く

<洗濯>
・洗濯バサミで端と端を挟んで干す
・洗濯物を左右対称に畳む
・洗濯物を大・中・小や、所有者別に分ける
・畳んだ洗濯物をしまう

<料理>
・野菜の皮をむく
・野菜を切る
・切ったものでお味噌汁などを作る
・お箸をそろえておく
・お盆に乗せて運び音を立てずに器を置く
・お水をコップに注ぐ

 「わが子は何をやりたがっているのか、興味を持ちそうなことはあるかをしっかり見てあげることが大切」と相良さん。次のページからは、お手伝いを通じて子どもの成長を促すために、親はどのように環境を整えサポートできるかを具体的に見ていきましょう。

わが子は何をやりたがっているのか、興味を持ちそうなことはあるかをしっかり見てあげることが大切
わが子は何をやりたがっているのか、興味を持ちそうなことはあるかをしっかり見てあげることが大切

【次のページからの内容】
・子どもがお手伝いしやすくなる、6つのポイント
・ゆっくり、無言で集中 子どもの知性のスイッチオン!
・訂正はせず、繰り返し正しいやり方を見せ続ける
・知性を刺激するキーワードは、「予測」「分類」「秩序」
・まずは100日継続して習慣に、親の変化が子に伝わる