アンケートで目立ったのが「いじめを相談したとき、教師が親身になってくれなかった」という回答。ストップいじめ!ナビの須永祐慈氏も「学校との関係が完全にこじれてしまい、教育委員会でも解決せず、マスコミやNPO法人に助けを求めてくる親は少なくない」と話す。学校と保護者が協力し合い、円滑にいじめ問題を解決するにはどうしたらいいのだろうか。
教師の問題解決力にキャリアは関係ない
「親が学校の対応を冷たく感じる理由には、学校がいじめられた側といじめた側に対し、中立の立場を取らなければならないという事情もあります」と話す、東京聖栄大学の有村久春教授。
いじめた側の子どもも同じ学校の生徒。教師はどちらの話も公平に聞かないといけないので、確かに難しい立場ではある。さらに、教師本人の資質の問題が加わってくる。
「担任教師とクラスの子の関係性によって、いじめの発覚の早さが変わる」と話すのはスクールカウンセラーの栗原さん。日ごろから子どもと関わっている教師のところには「クラスでいじめが起きているかも」と感じた瞬間に、子ども達が相談や報告に行くことが多いという。反対に、子どもを制圧するような態度をとる教師や、授業以外の時間に関わりを持とうとしない教師が担任の場合、いじめが起きたときに子ども達に話を聞こうとしても、どの子もなかなか口を開いてくれないという。
「子ども達と上手な関係を築くのに、先生のキャリアは関係ないんですよ。昨年、私が通っている小学校の3年生のクラスでいじめ問題がありましたが、そのクラスを受け持つ教師歴2年目の女性教師は子ども達からの信頼が厚く、あっという間に問題解決に至りました」(栗原さん)
若い教師はいじめ問題へのリテラシーが高い
この20年でいじめ問題への取り組みが変わり、小学校でいじめについて学ぶ授業が取り入れられ始めたように、教師を目指す大学生もいじめ問題を学ぶ機会が増えている。
「若い教師はいじめ問題へのリテラシーがそもそも高いし、柔軟性もある。一方、ベテラン教師は経験に基づいた個人的な教育観が固まり過ぎて、時代の変化や子どもの個性に対応できないという場合があります」と、有村教授は説明する。
もちろん、すべてのベテラン教師がこり固まった考えを持っているわけではない。有村教授が言いたいのは、「若い」「経験不足」というだけで教師を信頼しないのはもったいないということだ。新任教師であっても、担任であればわが子の普段の様子や、クラスの状況について最も詳しいのは間違いない。相談を持ちかけたときの反応から、その後の対応を考えてもいいかもしれない。